こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン

otello2006-06-26

ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン GET RICH OR DIE TRYIN'


ポイント ★*
DATE 06/5/29
THEATER UIP
監督 ジム・シェリダン
ナンバー 83
出演 50セント/テレンス・ハワード/アドウェール・アキノエ・アグバエ/ジョイ・ブライアント
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


貧困と暴力が横溢する街で成り上がるには、犯罪に手を染めるしかない。そう考え、行動してきた自分の人生を言葉にする主人公。しかしそこからはチンピラの自己弁護しか聞こえてこない。確かに悲惨な環境で生まれ育ち、まともな教育も受けられなかったのかもしれない。それでも犯した罪をきちんと清算していない男が自分の生い立ちを音楽にすることで富を築いていいものだろうか。生き残るために仕方なく銃を放ったのではなく、単なるチンピラ同士のいざこざで発砲するような男がどんな優れた作品を残しても共感しない。


女手ひとつで育てられたマーカスは、成人後ドラッグの売人として頭角を現す。マーカスの才気を恐れた兄貴分・マジェスティックの罠にはまり服役するが、監獄の中で自分の思いをヒップホップで表現することに生きがいを見出す一方、バマという友人にも恵まれる。


対立する相手には容赦なく銃弾を浴びせ、有無を言わさず従わせる。あまりにも身勝手な論理がはびこるニューヨークの貧困コミュニティ。暴力や裏切りに対してなんら反省することなく、むしろそれがこの街の当然のルールのように描かれる。銃声と流血が絶え間ない現状を肯定するようなスタンスは不愉快極まりない。せめてマーカスがドラッグや暴力を憎み、根絶するために闘うならば応援したくもなるが、彼の目的はカネを稼ぐことだけ。マーカスは確かに家族や仲間を大切にし、知恵も行動力もあるが、それ以上に魅力は感じない。


コロンビア人を襲撃した後、刺客に襲われ瀕死の重傷を負っても奇跡的に生還したマーカスは、その後ヒップホップに専念し大成功を収める。そんな、他人の流した血の上に築いたサクセスにどれほどの意味があるのだろうか。少なくとも、マジェスティックの妨害を暴力ではなく知恵で撃退するくらいの機知は見せてほしかった。


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