こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

カサノバ 

otello2006-07-04

カサノバ CASANOVA

ポイント ★★
DATE 06/6/24
THEATER チネチッタ
監督 ラッセ・ハルストルム
ナンバー 100
出演 ヒース・レジャー/シエナ・ミラー/ジェレミー・アイアンズ/オリバー・プラート
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


カーニバルの喧噪を眼下に、打ち上げられた花火を間近にながらゆったりと夜空を舞う気球のゴンドラで、ワイングラスを傾けながら愛を語る男と女。この美しく幻想的なシーンは恋愛を賛美し自由を謳歌する主人公のみならず、歴史と伝統を堅持しながらも、流行に敏感で権威を嫌うヴェネチア市民の心意気を象徴する。学問やビジネスで成功することはもちろん大切だが、恋の喜びなくして何が人生か。しかし、主人公の思いとは裏腹に、本来コメディにするべき素材をまじめに描きすぎたせいで、気球と同様この映画も高みに昇ることなく失速する。


稀代のプレイボーイとして名をはせるカサノバは、フランチェスカという進歩的な女性に一目惚れし、彼女に近づこうと手を尽くす。ローマから送り込まれた審問官が彼を捕らえようとしたことから、フランチェスカの婚約者に化けて一芝居打つ。


眉根に皺を寄せて深刻ぶった表情が得意のヒース・レジャーカサノバを演じさせたのは全くのミスキャストだ。女たらしだが、男も惚れるような剛胆で行動力のある男。ラスト近くで処刑場から逃げ出すときに群衆が熱狂したように、カサノバは共和制を敷く独立国ヴェネチアの自由のシンボルなのだ。もう少し器の大きさを感じさせる俳優に演じさせるべきだはなかったか。


駆け引き、騙しあい、勘違い...。恋する男女が入り乱れ、そこに権力が介入してくるが、最後には真実の愛を知った者が勝つという典型的オペラ・ブッファのような内容。ならば笑いを取るような演出を心がけるべきだろう。特に舞踏会でカサノバが必死で素顔と仮面を使い分けて二役を演じる場面など、爆笑シーンにすべき所なのにサスペンス調にするという大失敗。せっかくよくできた脚本とカネのかかったヴェネチアロケをしながらも、主役の選定を誤り演出プランも未熟なままの作品を上映されてはカサノバも浮かばれまい。。。。


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