こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

2番目のキス

otello2006-07-14

2番目のキス FEVER PITCH


ポイント ★★★*
DATE 06/5/17
THEATER 20世紀フォックス
監督 ピーター・ファレリー/ボビー・ファレリー
ナンバー 74
出演 ドリュー・バリモア/ジミー・ファロン/ジャック・ケーラー/アイオン・スカイ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


たとえ相手が振り返ってくれなくても全身全霊を込めて無償の愛を注ぎ続ける。その対象は低迷するプロ野球チーム。女から見れば1円のトクにもならないことに、半ば人生をかけている男の気持ちがとてもリアルに描かれている。どんな行事よりも試合日程を優先させ、負けても負けても球場に駆けつけ選手に声援を送る野球中毒男。彼の言動からは視覚的なものだけでなく、球場の土のにおいや芝の香り、ゲーム展開に一喜一憂するファンの熱気まで伝わってくるようだ。


小学校教師のベンはキャリアウーマンのリンジーと恋に落ちる。ボストンレッドソックスのファンのベンは年間シートを買って毎試合見に行くほどの熱狂ぶり。最初はベンのそんなところに惹かれていたリンジーも、自分より野球を大切にするベンに不満を抱き始める。


レッドソックスの応援を生活の中心にする馬鹿な男と、ビジネスの世界に生き上昇志向の強い女。収入という面ではベンは明らかに負け組みでリンジーは勝ち組。だが、その差をあまり極端せず、「身分の違い」というところまでにしなかったので2人のキャラクターに親しみを持てた。仕事も好きだが恋も現役でいたいという今風の30女をドリュー・バリモアはコミカルに演じ、観客の腹をくすぐる演出も匙加減がよい。男には「野球の応援に命をかける男の気持ちは女には絶対分らないだろうな」、女には「恋する女の気持ちをもう少し理解してほしい」という主張は恋するカップルの心に共鳴するはずだ。


グラウンドと観客席を区切るフェンスがなく、鳴り物応援を仕切る応援団もいない。ボールを受けるグローブの音やボールを叩くバットの音、選手同士の話し声まで聞こえてくるメジャーリーグの球場。ファンと選手の距離が身近に感じられる空間がとてもファンタスティックだ。映画から満ち溢れる野球への愛が、心地よいラブストーリーとして昇華されている。


↓メルマガ登録はこちらから↓