こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ジャンプ! ボーイズ

otello2006-08-01

ジャンプ! ボーイズ

ポイント ★★*
DATE 06/4/20
THEATER メディアボックス
監督 林育賢
ナンバー 59
出演 林育信/黄靖/黄克強/李智凱
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


股関節を広げるストレッチの痛みに耐え、コーチの厳しい叱責に涙する。まだ9歳なのに、毎日の練習に歯を食いしばりより難度の高い技に挑戦する。しかし、根性主義に陥ることなく自主性を重んじてやる気を出させるコーチのおかげで、子供たちの表情は明るい。学校が終わったら体操漬けの生活も、勝つために払うべき犠牲も、子供たちが自分から進んで体操にかかわろうとしているから悲壮感はなく、生き生きとした表情ばかりが印象に残る。


台湾の地方都市、元体操選手の林は身体能力に優れた子供たち7人を集めた体操教室を開いている。個性に富んだ子供たちの得意技を伸ばし、苦手を克服させるために競争原理を用いたりと指導法に工夫したおかげでぐんぐん実力をつける。そしてチームは高雄で開かれる全国大会に出場する。


仲間との喧嘩も、コーチに怒られたことも、練習での筋肉痛も、一晩寝たらきれいに忘れてフレッシュな心身に戻ってしまう子供たちの姿がまぶしい。しかし、少年たちがまだ幼すぎて屈託がなさ過ぎ、ドラマの山となるようなエピソードがないのが寂しい。たとえば鞍馬で1回しか回れない少年や鉄棒の着地が決まらない少年が、連日の居残り特訓で弱点を補正するとか。彼らが幼いながらも血のにじむような努力をして、その結果の金メダル量産ならば納得がいくのだが、なんか「試合に出たら勝っちゃった」みたいなクライマックスに肩透かしを食らわされたような気がする。


もちろんドキュメンタリーなので、そのあたりの作意のなさがこの作品のセールスポイントなのだろう。それでも、こんな描き方ではもともと才能に秀でた少年たちだからこの程度の練習でも勝てたのだ、という感想しかもてない。ラスト、鞍馬が苦手な少年が1年後には難なくこなしているシーンが挿入されるが、その結果だけを見せるのではなくそこに至る過程を丁寧に追ってこそドキュメンタリーなのではないだろうか。。。


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