こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バックダンサーズ!

otello2006-09-21

バックダンサーズ!


ポイント ★★*
DATE 06/9/19
THEATER 池袋東急
監督 永山耕三
ナンバー 157
出演 平山あや/hiro/ソニン/サエコ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


ダンサーとして成功してみせる。そんな、夢を追いながら挫折を繰り返し、それでもあきらめずにがんばるというありふれた設定ながら、才能のない者、時流に乗れない者はすぐに切り捨てられるという芸能界の厳しい掟もきちんと描いているところに好感が持てる。地方のドサ回りから後輩ユニットの前座まで、売れない芸能人の食いつなぐためのわびしさが漂うシーンには非常にリアルで、夢だけでは生きていけない現実がスパイスとなって効いている。


スター歌手のバックで踊っていた4人組が歌手の突然の引退宣言で仕事を失う。新米マネージャーが持ってきた仕事はロートルロックバンドとの温泉ツアー。しかし、その後は仕事が続かず解散の危機に瀕する。


子持ちの元キャバクラ嬢ダンサー・トモエを演じたソニンが、売れない演歌歌手のような「B級タレント感」を醸し出す。年齢をサバを読み、胸を強調するような衣装でキャバクラ業に励む。それでもあきらめきれない芸能界への憧れ。一方で自分の子供もいとおしくて仕方ない。二十歳やそこらの小娘にはない女としての苦労がありながら、表向きはギャルで通そうとするイタイまでのミエ。バックダンサーズ4人のなかで、一人だけ上半身にやや脂肪がついたソニンの肉体が、彼女自身の現実の芸能界でのポジションを表しているようだ。


また、音楽にしがみ付くオッサンバンドも、普段はアルバイトで糊口をしのぎ、それでも音楽は楽しくて仕方がないという風情。別に金儲けしようというのではないく、あくまで人前で歌い、演奏するのが好きというだけ。映画中たびたび出てくる「上がり」という言葉はゴールを指しているのだろう。ひとつの上がりをクリアしてもまた次の上がりを目指してがんばらなければならない。そして人生はその繰り返し。好きなことをずっと続けられることが「上がり」であることを、オッサンバンドは教えてくれる。


↓メルマガ登録はこちらから↓