シュガー&スパイス 風味絶佳
ポイント ★*
DATE 06/9/17
THEATER ワーナーマイカル新百合ヶ丘
監督 中江功
ナンバー 156
出演 柳楽優弥/沢尻エリカ/大泉洋/夏木マリ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
もはや下品を通り越してグロテスクな悪趣味にしか思えない夏木マリ扮する老婆が、奥行きの乏しい物語をさらに浮き彫りにする。原作に描かれたキャラクターはエキセントリックな中にももっと品があったはず。活字ならば想像をふくらませるだけで済むが、俳優が間違った解釈で実態を与えてしまうと、見てはいけない物を見てしまったような気分になる。老いてなお美しく気品のあるジャンヌ・モローやシャーロット・ランプリングとは大違いだ。
高校卒業後ガソリンスタンドで働く志郎の前に乃里子という女子大生が現れ、ふたりは恋に落ちる。乃里子は志郎の祖母・富士子ともすぐにうち解け、富士子は若いふたりの恋の相談相手として頼りにされるようになる。
女に優しすぎる男はもてない。志郎はそれがわかっていてもついつい相手に優しくしてしまう。恋の駆け引きには時には強引さも必要ということを富士子は志郎に教えようとするが、志郎はいっこうに変わらない。志郎は恋に対して主体性がなさすぎるのだ。進学しないということにはかたくなに自分の意志を通すのに、彼女が相手だと急に臆病になる。それでも好きで好きでたまらない気持ちを相手にぶつけるのならいい。狂おしいまでの恋する気持ちは友人に預け、自分はクールなまま。恥も外聞も捨てて「君がほしい」ということを相手に伝えなければ、女は他の男になびいてしまう。富士子はなぜそのことをもっと強く志郎に教え込まないのだろうか。
結局、乃里子は元カレとヨリを戻し、志郎の元を去る。その時も自転車で追いかければまだ取り戻せたはずなのに、彼女を乗せた車が走り去ってから追いかける。この男はバカなのだろうか。追いつくつもりなら信号待ちで追いつけたのに、遠くに行ってから追いかける。要するに最初から乃里子を取り戻す気などなく、一応追いかけたという事実だけを作っておきたかったのだろう。こんなヤツにすぐにまた恋のチャンスを与えるなど、甘やかすのも程々にしてほしい。