こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

イルマーレ THE LAKE HOUSE

otello2006-09-27

イルマーレ THE LAKE HOUSE

ポイント ★★
DATE 06/9/23
THEATER ワーナーマイカルつきみ野
監督 アレハンドロ・アグレスティ
ナンバー 160
出演 キアヌ・リーブス/サンドラ・ブロック//
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


メールでもなく、電話でもない、手書きの手紙にはやはり書き手の特別な感情がこもっている。ペンをとり、言葉を練り、文字をしたため、決してコピーは残らない。相手に送られたものが唯一の実存というその貴重さゆえに、思いを伝えるのには絶好のメディアだ。いまや忘れられようとしている通信手段を使うことで、会ったことのない男と女の心を手紙で結び付けようという発想は21世紀ではかえって新鮮だが、その手紙がすぐに相手に届いてしまうようでは興ざめもはなはだしい。結果的に、湖畔にたたずむガラス張りのコテージに時空を超えた恋を絡めただけの安易な作品になってしまった。


レイクハウスからシカゴに引っ越すケイトは次の住人に郵便の転送を頼む置手紙を残す。それを受け取ったアレックスは不思議に思い返事を出すが、ケイトからの返信はどこかかみ合わない。やがてケイトは2006年に、アレックスは2004年に生きていることが判明、ふたりは2年の時のずれを超えて心を通わせていく。


ファンタジーにいちいちツッコミを入れるのは野暮だが、それでも過去に住む人間に未来から指示を与えて運命を変えるのはやはりルール違反だ。それが、「明日は季節はずれの雪が降るから気をつけたほうがいい」とケイトがアレックスにマフラーを送る程度ならロマンティックですむが、過去のケイト自身にアレックスが接触するように仕向けるのでは自分自身の記憶まで改ざんしなければならないではないか。かなえられなかったからこそ美しい思い出となる恋愛、そのせつなさと悲しみの中に人生の真実を見つけ出すべきだろう。


また、相手に届くまで数日かかり、さらに返事をもらうまでの待つ間に心をときめかせるというのが文通の醍醐味なのに、ポストに入れるだけですぐに相手に届くのではチャットルームと同じではないか。そして、すべての秘密を知っているはずのポストと犬が伏線として生かされていないのは、脚本の致命的な欠陥だ。絵空事にリアリティをもたせるためのディテールの工夫をもっとしてほしかった。


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