こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ホステル

otello2006-11-04

ホステル HOSTEL


ポイント ★★*
DATE 06/9/1
THEATER ソニー
監督 イーライ・ロス
ナンバー 143
出演 ジェイ・ヘルナンデス/デレク・リチャードソン/エイゾール・グジョンソン/バルバラ・ネデルヤコーヴァ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


恐怖、苦痛、絶望、そして死。あらゆる拷問道具を駆使して獲物となった人間をいたぶって殺す。その描写は悪趣味の一歩手前でかろうじて踏みとどまっているが、見るものに不快感を与えるのには十分。切られ、えぐられ、焼かれ、殺される過程で泣き叫び、許しを乞い、駆け引きをして何とか助かろうとする犠牲者の表情が恐ろしくリアルで、感情の沸点をはるかに越えた本能をさらけ出す。もはや理性では解釈できない巨大な悪と闘って生き残るには、相手を殺すしかない。


バックパッカーとして欧州旅行中のパクストン、ジョシュ、オリー3人組が、スロバキアにある小さな街に行けばやりたい放題という話を聞き、早速そこに向かう。果たしてチェックイン早々美女と知り合い有頂天になるが、オリーが突然姿を消す。その翌日、今度はジョシュが姿を消したことから、パクストンは2人の後を追う。


我が物顔でやりたい放題のアメリカ人の若者が、古いヨーロッパから強烈なしっぺ返しを食らう。その過程はある種いい気味と思わせるのだが、ヨーロッパの悪意があまりにも大きいと、今度はアメリカ人の行動に共感したくなる。恐怖の館で繰り広げられる殺人ショーには嫌悪感を覚えるのに、パクストンが彼らを殺しまくるシーンはむしろ爽快。最後にはパクストンは自分たちを殺そうとした男の指を切り落とした上にのどをかき切って殺すが、ここではむしろその暴力にカタルシスすら覚えてしまう。その暴力に対するスタンスの転調がスムーズで、計算された脚本が効果的に生きている。


それでも、血が飛び散り、肉体が切り刻まれるシーンを執拗に見せられるのはやはり気が滅入る。拷問道具の使い方をうんざりさせる手前で抑えておけば、洗練されたホラー映画としてもう少し支持を集めたに違いない。まあ、こういう状況に陥った場合、命乞いをして相手に主導権を握られるより、どんなに不利でもあくまで強気に出たほうが死中に活を求められる確率は高いという教訓を得られただけでも収穫だった。


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