こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

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otello2006-11-16

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ポイント ★★★*
DATE 06/11/14
THEATER シネクイント
監督 サイモン・ブランド
ナンバー 196
出演 ジム・カビーゼル/グレッグ・キニア/ジョー・パントリア/バリー・ペッパー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


誰が悪党で誰が被害者なのか、周りの人間だけでなく自分自身も信用できない。誘拐犯と人質、記憶を失ったまま密室に放置された5人の男たちが目覚めたとき、本来の人間性が赤裸々になり、わずかによみがえる過去の断片が徐々に真実を明らかにしていく過程は、自らのアイデンティティを見直す時間となる。はたして自分は何者なのか、せめて悪人であってほしくないという願いは5人に共通。映画はミステリアスな装いのなかで、人間のサバイバル本能をむき出しにしていく。


厳重に閉鎖された砂漠の廃工場で5人の男が目覚めるが、毒ガスの作用で記憶を失っていて自分の名すら思い出せない。やがて2人が人質で3人が誘拐犯だということが判明する。一方、誘拐犯の一味が戻るという連絡が入り、とりあえず5人は協力して生き残りを図る。


誰もが自分は犯人ではないと思いたがる。そんな人間の心理を巧みに操り、とりあえず全員が善人と仮定して協力するあたり、有限の空間に閉じ込められた極限の心理状態をよく描けている。並行して犯人を追う警察のエピソードを盛り込むことで時間的な経過を示している。工場内は寒色を用いたフィルムで5人の不安と疑心暗鬼を表現し、外側を描くことでタイムリミットが迫る緊張を盛り上げる。誰も信用できないが誰かを信用しなければ生き残れない、そんな計算された脚本と演出、低予算映画ならではの斬新なアイデアが溢れている。


やがて記憶が徐々に戻り始めたころ、誘拐犯一味が工場に戻ってくる。そこに警察が現われ人質のひとりは死ぬがひとりは解放、誘拐事件は一段落する。しかし、誘拐犯のひとりは実は潜入捜査官だったというオチだけでなく、さらに人質の妻が捜査官の愛人で、誘拐事件そのものがこの2人が仕組んだ芝居だったという二重のどんでん返しが待っている。最後まで息が抜けない展開の中で、騙されることの快感を味わえる作品だった。


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