こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブいぬベンジー はじめての冒険

otello2006-11-17

ラブいぬベンジー はじめての冒険 BENNJI:OFF THE LEASH!


ポイント ★*
DATE 06/8/25
THEATER 東芝エンタテインメント
監督 ジョー・キャンプ
ナンバー 137
出演 ニック・ウィテカー/クリス・ケンドリック/ドゥエイン・スティーブンス/ランドール・ニューサム
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


じっと見つめられたら思わず抱きしめたくなる。そんな気持ちにさせるテリア系の長い金色の毛と黒いつぶらな瞳。よく調教された犬たちが繰り広げるドタバタ騒動は子供たちには受けるだろう。人間へのおびえ、母犬への愛、そして飼い主への忠誠など、人間がかわいいと思う犬の気持ちを最大限に表現している。しかしそのせいで物語は単調になり、まともな大人が鑑賞するレベルには程遠い。たしかにデジタルイフェクトなどに頼らない動物相手の根気のいる撮影は大変だと思うが、それでも犬の成長物語としては非常に物足りない。


コルビーは雑種の子犬を密かに飼っていたが、ブリーダーの父に見つかってしまう。父は犬を虐待し子犬の母犬は病気でも獣医に見せてもらえない。子犬は密かに母犬に会いに来て、ついには檻のかんぬきを開けてしまう。


人間と犬のかかわり方が中途半端な上、子犬にもいつの間にか仲間ができてしまうというご都合主義。とくに動物保護官の2人組みの間抜けぶりは、いまどき吉本新喜劇でもやらないようなギャグともいえないずっこけ。犬を捕まえようとして頭を鉢合わせしたり、顔から水溜りに突っ込んだり、麻酔矢を仲間の尻に撃ち込んだり。この程度で笑いが取れるのはせいぜい小学校低学年までだろう。


いくら子供向けの映画といっても、子供に同伴させられる親=大人もある程度楽しめる作品に仕上げないと興行的にはつらいはず。たとえばDV父の虐待のせいで犬が唯一の友達であるコルビー少年の孤独とか、一人暮らしの老人の愛犬にまつわる思い出とかを描きこんでいれば少しは違った印象になっただろう。そもそも生まれてすぐに母犬から引き離された子犬が、1年もたってから病気の母犬を助けようとするものなのか。犬のかわいらしさを理解しない人間にはいささかつらい映画だった。


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