こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

暗いところで待ち合わせ

otello2006-11-28

暗いところで待ち合わせ


ポイント ★★
DATE 06/10/13
THEATER 映画美学校
監督 天願大介
ナンバー 175
出演 田中麗奈/チェン・ボーリン/井川遥/佐藤浩市
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


光のない世界に生きる女と、心に大きな闇を抱える男が出会う。女は1人暮らしの視覚障害者、男は殺人容疑で追われる身。見えなくても相手の存在を感じ、言葉はなくても相手の心中を察する奇妙な共同生活を送るうち、2人はお互いへの思いを高めていく。特殊なシチュエーションのなかで、女の気持ちは猜疑から信頼に、男の気持ちは怯えから安堵に変わっていく。2人の間に会話はなく、繊細な表情の変化だけで感情を表現していく過程は緊張感が漲り、沈黙が饒舌に2人の感情を物語る。しかし、物語のテンポがのろく、映像の硬質なテンションを維持できていない。


駅前の一軒家に暮らすミチルは全盲。そんな彼女の家に、駅のホームで起きた殺人事件の容疑者・アキヒロが忍び込む。アキヒロはミチルの家でじっと息を潜めミチルに気づかれないようにしているが、やがてミチルはアキヒロの気配を察するようになる。


全盲とは思えないほどミチルの家の中は整頓されているし、ミチル自身もキレイな身だしなみ、その上料理も掃除もきちんとしている。そのあたりのリアリティより、外出することに臆病になっている彼女の心理を描くことに重点を置いている。またアキヒロの描き方も日本人を誰も信用できない中国出身者の孤独という視点。2人とも外の世界とはうまく折り合いがつけられない不器用な生き方しかできない。そんな2人が禁断の愛を静かに育てていくのかと思いきや、殺人事件の真犯人が現れるというどんでん返しが用意されている。


しかし、いくらなんでも駅員や電車の運転士が事件現場でアキヒロの姿だけ見て犯人の姿を見ていないなどということはありえないだろう。ほかに遮蔽物などない現場だというのに。せっかく心に傷を負った男女の未来がサスペンスフルな演出で彩られていたのに、井川遥扮する犯人の唐突な出現が安っぽい印象を与えてしまった。


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