こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

大奥

otello2006-12-26

大奥

ポイント ★★
DATE 06/12/25
THEATER 丸の内TOEI
監督 林徹
ナンバー 227
出演 仲間由紀恵/高島礼子/井川遥/西島秀俊
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人気女優がきらびやかな衣装に身を包み勢ぞろいするさまは、まるでお正月の「時代劇特番」を見ているよう。アップの多用、細かいカットの繰り返し、わかりやすい演技とライティングなどもテレビドラマの演出法を踏襲していて観客をあきさせない工夫は随所に見られるものの、その分無駄なエピソードも多く、映画としてのしまりに欠いている。放送時間の長いテレビドラマなら名のある女優全員にセリフを与えることもファンサービスだろうが、映画として見る場合には邪魔にしかならないことを脚本家は気づくべきだ。


徳川7代将軍の生母・月光院に仕える大奥総取締役・絵島は天英院一派と権力争いを続けていた。月光院は側用人と通じ、そのうわさを聞いた天英院は歌舞伎役者の生島に命じ、絵島に接近させる。男を知らない江島はやがて生島に心を開いていく。


女だけの世界に渦巻く権力欲、嫉妬、陰謀。それらをむき出しにして敵を追い落とそうとする。しかし、あらかじめ敵味方がはっきり分かれているために意外な展開はない。天英院側の陰謀と知りつつ絵島は生島に魅かれていくのだが、生島もまた絵島に本気でほれていたという結末はあまりにもお粗末。大体、芝居小屋が火事になったことは生島の計画にはなかったことなのに、そこから脱出したふたりがおあえつらえ向きの屋形船にしけこむなどとはご都合主義丸出し。もともと歌舞伎見物の後で使うつもりで用意してあったのだろうか。


そもそも大奥に入れる男子は将軍だけと言いながら、その次のシーンでは幼い将軍が側用人ともども大奥入りしている。この設定のいいかげんさはどうしたことだ。例外があるのならきちんと断るべきだろう。また、時に出てくる大奥女中の3人組も笑いを取るつもりなのだろうが、まったく時間の無駄。風車売りの少女も伏線として生きてこない。このあたりの脚本の甘さを見逃してしまうところがテレビ向けで、カネを取って映画として公開するのならもう少しじっくりと腰をすえて取り掛かってもらいたいものだ。


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