こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リトル・ミス・サンシャイン

otello2006-12-27

リトル・ミス・サンシャイン LITTLE MISS SUNSHINE


ポイント ★★★*
DATE 06/12/23
THEATER チネチッタ
監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
ナンバー 226
出演 グレッグ・キニア/トニ・コレット/スティーブ・カレル/アビゲイル・プレストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人生の勝ち組になり、そこに居続けるためには、常にアグレッシブ。しかし、この家族は意味をはきちがえ、誰かが発言したことに誰かがいちいち上げ足を取り、その結果口論が絶えない。みな自己主張が強く、他人を言い負かすことにだけ力を入れる。他人と競争することは努力を促し自分を高める結果を産むことは違いないが、すべてに勝ち続けることなど不可能で無意味。それより家族皆で力を合わせてひとつの目標に向かえば、たとえ負けてももっと大きな意味での成功を勝ち取ることが出来るのだ。


フーヴァー一家の末娘オリーブがカリフォルニアで行われる美少女コンテストに出場するために、家族6人はオンボロバスに乗って旅に出る。事業が行き詰っている父、短気な母、自殺未遂の伯父、口を利かない兄、そして唯一の理解者である祖父。バラバラだった家族はいつしかオリーブのために協力し合うようになる。


他人の価値観を認め、受け容れることが負けにつながるという不寛容の精神が映画の前半に蔓延している。他人を蹴落としてでも生き残るという不健全な精神。自分の価値観だけが正しいという独善の正義。それは国際情勢における米国の位置とシンクロし、強烈な政権批判となっている。意見が衝突しても相手の立場を思いやれば、新たな解決策とお互いが勝ち組になれる道が開ける。ミニバスという狭い空間で運命共同体になったバラバラの家族は、地球という小さな惑星の上で争っている国家そのものだ。


そして、ミスコンに出場する少女たちの老成した容貌の不気味なこと。人工的な美しさが強調され、少女らしさは微塵もない。ここにも勝利至上主義が蔓延し、オリーブ以外の出場者は皆毒されている。そんな中、舞台で拙いセクシーダンス踊るオリーブを家族全員でバックアップするするシーンには、勝ち負けより力をあわせることが大切だというこの映画のテーマが凝縮されていた。


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