こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

百万長者の初恋

otello2007-01-06

百万長者の初恋



ポイント ★*
DATE 06/9/14
THEATER スペース汐留
監督 キム・テギュン
ナンバー 153
出演 ヒョンビン/イ・ヨニ//
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


大金持ちのドラ息子と孤児院育ちの気立てのいい娘、出生の秘密と封印された記憶、不治の病と悲しい恋。安手のメロドラマの要素を何の臆面もなく羅列した上に予想通りの展開を見せる。いくら韓流イケメン俳優が主人公を演じていても、ここまで何の仕掛けも新鮮味もなければ、まともな大人ならあくびが出る。おそらく高校生がターゲットなのだろう、ならばもっと高校生が共感できるようなエピソードを挿入するべきなのに、そういった心遣いもない。それでも映像や演技に才能のきらめきが感じられれば耐えられるのだが、最後まで期待のままで終わってしまった。


大富豪の祖父の遺産を相続することになったジェギョンは、遺言に従い田舎の高校に転校する羽目になる。わがまま放題だった彼の前にウナンという少女が現われ、田舎での生活になじむ様世話を焼く。しかし、彼女の心臓は病に冒されていて余命いくばくもなかった。


ジコチューで乱暴、何でもカネで解決できると思っているいやな少年が、初めて愛を知ったときに自分の無力を思い知る。だが、それは好きな少女の気持ちを自分に向けられないという無力さではなく、彼女の命を救えないことから感じる無力さなのだ。ドラ息子を改心させるのならば、まず愛しているのに見向きも去れないつらさを味あわせるべきなのに、ウナンの心は最初からジェギョンに向いている。これでは自分の余命の短さを知るウナンが、財政難の孤児院を救うためにジェギョンに接近したとも考えられるではないか。


ウナンは心臓の病気で、ちょっとした刺激でも体によくないはずなのに、ガソリンスタンドや農場で肉体労働したりミュージカルでダンスを披露したりと、なぜか心拍数が上がることも平気。時々は倒れたりもするが、だれも彼女に安静にしろとは言わない。おまけにジェギョンとウナンはいつの間にか同棲していたりする。いかにも思いつきのエピソードのパッチワーク、およそディテールというものに関心を払わない。脚本をもっと緻密に構成しなおすべきだろう。


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