こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鉄コン筋クリート

otello2007-01-10

鉄コン筋クリート


ポイント ★*
DATE 07/1/6
THEATER 109グランベリーモール
監督 マイケル・アリアス
ナンバー 3
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


なにゆえこれほどまでにわかりづらくするのだろう。物語も人間関係も単純なのに、登場人物の口から出る言葉は虚飾に満ちた哲学問答のよう。普通の言葉で普通に話せばすんなりと咀嚼できるにもかかわらず、いちいち回りくどく説明が加えられる。作者自身が「この作品はそんじょそこらのアニメと違って独特の世界観を持っているのだ」と必死になって喧伝しているよう。そんな評価は見たものがするのであって、送り手側から誇示するものではない。


宝町に再開発の計画が持ち上がり、街のヤクザが地上げを始める。クロとシロは宝町を守るため、ヤクザに牙をむく。さらに外部のヤクザが殺し屋と共に宝町に乗り込み、クロとシロの命を狙う。


古さと斬新さが軒を並べ、和風とエスニック風が同居するような宝町の街並みは、どこかで見たようでどこにもないという新鮮な懐かしさをかもし出す。細密に描かれたレトロフューチャーな造形は鮮やかとは程遠く、どこか記憶の中をさまよっているようだ。しかし、そこは別段何も変わったことのないフツーの街。だから余計にその街で電柱を飛びビルを駆け空を舞うクロとシロの動きが奇異に感じられる。そして彼らの言動も決して共感できるものでもなく、なんかわけのわからんガキがただ暴れているだけという印象しか持てない。唯一、シロの身を案じるゆえにクロがシロを警察に引き渡すシーンだけは理解できたが、自分と一緒にいると危険が及ぶからわざと相手に憎まれるようなことを言って離れていくなどというシチュエーションはありきたり。結局、通俗に落ちている。


独特の世界観があるようで、結局、地上げヤクザとの闘いの中で2人の少年が友情を確かめ合うというよくある話。奇をてらった看板と内装がウリのレストランに入ったけど、出てきた料理は何の特徴もないカレーライスだったみたいな印象の映画だった。テレビの深夜放送ならば熱狂的なファンも現れただろうが、カネを払ってみるほどのものではない。


↓メルマガ登録はこちらから↓