こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

合唱ができるまで

otello2007-01-11

合唱ができるまで LES METAMORPHOSES DU CHOEUR


ポイント ★★
DATE 06/10/31
THEATER 映画美学校
監督 マリー=クロード・トレユ
ナンバー 185
出演 クレール・マルシャン///
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


小学生くらいの子供、ティーンエイジャー、老人、そして管弦楽。それぞれのパートが週に一度の練習を重ねクリスマスの本番を目指す。素人に近いアマチュアに、発声の基本から始めて細かい技巧、チームワークと調和を教え、個人の声がやがて大きな和声となってホールにこだまするまでを描く。カメラはただ淡々と指揮者とコーラス隊のリハーサル風景を見守るだけで、そこにはどんな作為や感情も入り込む余地はない。状況を説明するようなナレーションもなく、したがってこの合唱に参加する意思のないものは徹底的に排除される。


パリ13区にあるモーリス・ラヴェル音楽院に所属するアマチュア合唱団のメンバーは、クリスマスに教会で行われるミサコンサートの練習に参加する。子供、若者、老人の3つのパートに分れての週一回のリハーサルでメンバーは徐々に上達し、やがてオーケストラを交えて本番前の通し稽古が始まる。


映画は3つのパートの練習風景を交互に記録するが、時の経過を推し量るものは団員の上達度しかない。子供たちに基礎を教えるために「ラ」の音を回すシーンなど、合唱における他者への思いやりの気持ちがいかに大切かを具体的に教えてくれる。そしてソロの後を随唱する場面など、子供たちには合唱を通じて人間としての基礎的な思いやりを教えているようで興味深い。子供たちの素直な反応に比べ、ティーンエイジャーや老人たちはどこが衒いが感じられ、腹の底から歌声を出すことで自分自身を解放するまでに時間がかかっているところがおもしろい。


やがて、オーケストラを迎えてのゲネプロも終えいよいよ本番を迎えるが、映画ほうはなぜかここでエンドクレジットが始まってしまい、全曲終わる前に終了する。せめて劇中再三練習していた「真夜中のミサ曲」だけでも1曲最後まで聞かせてほしかった。合唱団の練習に散々つき合わせておいて、その成果の集大成を見せないのは少し意地悪がすぎるのではないだろうか。


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