僕は妹に恋をする
ポイント ★
DATE 06/12/4
THEATER 映画美学校
監督 安藤尋
ナンバー 212
出演 松本潤/榮倉奈々/平岡佑太/小松彩夏
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
人物の配置や構図、セリフの薄さ、間の長さ、どれをとっても少女マンガを見ているようだ。もちろん、登場人物のリアリティの薄さも含めて。それは原作の世界をそのまま映像にしようという試みなのだろうが、マンガなら30分で読み終わるようなヤマのないストーリーを水増しして、2時間以上に薄められては退屈極まりない。それぞれのエピソードもやおいの域を出ておらず、もう一度きちんと脚本というものを学んでほしい。
頼と郁は同じ高校に通う双子の兄妹。2人は小さいときは「結婚しよう」と約束したほど仲がよかったが、最近ギクシャクし始めていた。そんなある日、自分の本当の気持ちに気づいた頼はとうとう郁と結ばれる。一方、学校では頼は楠という女子に、郁は矢野という男子に好意を寄せられ、それぞれ気持ちの乗らないままデートを重ねていた。
いつもそばにいて、誰よりも近い異性。兄妹の禁断の関係を破ってふたりは愛し合うのに、そこには苦悩も悲壮感もまったくない。そこにあるのは、好きになったのがたまたま兄妹だっただけという軽さ。ならばいっそのこと、付き合っていることを他人に知られないようにするようなコメディにしてしまうとか、逆に頼が郁を妊娠させてしまってふたりともにっちもさっちも行かなくなるとか、物語を面白く工夫するポイントはいくらでもあったはず。奇妙にやわらかいライティングや長まわしのセリフには、マンガやテレビにない映画的な効果が現われていたが、それが観客を映画に引き付けるほどの魅力にはなっていない。
もともと「こんなアホことはありえない」という前提でスタートしているのだろう。頼と郁だって決して結ばれてはいけないことぐらい知っているはず。思春期の少女が見る妄想を映像にしようという意図も理解できる。ただ、松本潤と榮倉奈々を出しておけば女子中学生くらいまでなら文句も言わないという計算の下、まともな大人が鑑賞できるレベルの映画を目指していなかったことは確かだ。