こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

エレクション

otello2007-01-25

エレクション 黒社会


ポイント ★★★
DATE 07/1/23
THEATER テアトル新宿
監督 ジョニー・トー
ナンバー 14
出演 レオン・カーファイ/サイモン・ヤム/ルイス・クー/ニック・チョン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人の上に立とうというものは自分の手を汚さなければならない。部下よりも多く働き、部下の面倒を見、そうしてやっと勝ち得た尊敬を守るために更なる努力を怠たらず、誠実であり続ける。香港の裏社会を舞台に組織を束ねる会長の座をめぐる穏健派と武闘派の争い、そこで繰り広げられる葛藤はそのままそのまま現実社会の勢力争いに通じる。しかも、ここでの抗争は銃弾が飛ぶわけでも血しぶきが舞うわけでもない。それなのにその暴力がより痛みを伴うのは、男たちの心の叫びが痛切だからだ。


香港ヤクザの組織・和連勝会で会長選挙の時期が迫っていた。候補者は誠実で人望も厚いロクと暴力的だが金儲けの才能に長けたディー。ディーはカネをばら撒いて多数派工作を計るが、長老たちはロクを会長に選ぶ。しかし、ディーは会長のシンボルである竜頭棍の強奪を計る。


香港黒社会の源流が少林寺にあり、その結束を守るための血の儀式のシーンがいかにも道徳に厳しい中国的で、社会からはみ出た半端者の社会のほうがかえって信心深く規律も厳しいというところが興味深い。それは法律の庇護に頼れず、組織の掟に縛られる者たちの宿命だ。そんなヤクザ者だからこそ幼長の序を乱し筋を通さないディーは嫌われる。しかし、ディーに確固たる理論武装もなく、旧世代に反抗する新世代という位置づけではないため、単に乱暴者にしか見えないのが残念だ。


結局、次回の選挙でロクはディーを支持するということで2人は手打ちする。その後、2人は十年来のコンビのような仲のよさを見せるが、ディーがロクに共同支配を提言したことから、ついにロクの堪忍袋の緒が切れる。子分にディー暗殺を命じることなく自分の手で殺し、自分で掘った穴にディーの死体を埋めるロク。目の上のたんこぶであるだけでなく、組織も持て余していたディーを処分したことでロクは畏怖と尊敬を得る。真のボスになるには断固とした意思と行動が必要であることをロクの行為は教えてくれる。


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