こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

グアンタナモ、僕達が見た真実

otello2007-01-28

グアンタナモ、僕達が見た真実 THE ROAD TO GUANTANAMO

ポイント ★★★
DATE 06/9/27
THEATER 映画美学校
監督 マイケル・ウィンターボトム/マット・ホワイトクロス
ナンバー 163
出演 アルファーン・ウスマーン/ファルハド・ハールーン/リズワーン・アフマド/ワカール・スィッディーキー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


地面に金網を張って屋根をつけただけの家畜の檻に捕虜を監禁し、話すことも立ち上がることも許さない。肉体的に痛めつけるような暴力こそ控えめだが、この精神的な拷問は筆舌に尽くしがたい苦痛を与えるだろう。それでも3人の若者は最後まで耐え抜き、自らの潔白を勝ち取る。映画はキューバグアンタナモ米軍基地の「テロリスト収容所」で捕虜がどのようにに扱われたかを生還者の証言を元に忠実に再現し、ブッシュ政権がアルカイダ殲滅のために行った人道的犯罪を浮き彫りにする。


2001年10月、パキスタン系英国人アシフは、結婚式を挙げるためにパキスタンにある両親の故郷の村に友人らを招待する。途中、アフガニスタンにボランティアに行くが、誤ってタリバン支配地域に迷い込み、捕虜となってしまう。アシフ、ローヘル、シャイックの3人はアルカイダの疑いをかけられ、グアンタナモに移送される。


実験動物並みの劣悪な環境に長期間拘束され、人権も尊厳も踏みにじられた彼ら3人はいかにも気の毒だ。あらゆる心理的脅迫や欺瞞を駆使して、彼らをアルカイダに仕立て上げようとする米英の軍人・役人たちの取調べは悪魔的に容赦がない。しかし、3人の運命は彼ら自身の軽はずみな行動が引き起こしたもの。紛争地域に物見遊山で行って武装勢力につかまったのに、少なくとも命は助かったのだから不幸中の幸いだ。もし反米英勢力につかまっていたら、それこそ英国籍というだけで斬首されていただろう。


結局3人の疑いは晴れ、無事英国に送還される。当然3人に晴れやかな笑顔はないが、降って沸いたような災難、それが人災であっても、自ら「強くなった」と人生における試練のように受け止めているところに救いが見出せる。思い込み捜査による権力の暴走は厳しく監視しなければならないが、まだまだテロリストが横行するうちはこのような悲劇が繰り返されるだろう。国家という大きな権力の前には個人などまったく無力ということを、あらためて感じた。


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