輝く夜明けに向かって CATCH A FIRE
ポイント ★★*
DATE 06/11/27
THEATER UIP
監督 フィリップ・ノイス
ナンバー 206
出演 デレク・ルーク/ティム・ロビンス/ボニー・ヘナ/ズーコ・セプテンバー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
善悪の基準が曖昧になってしまった21世紀と違い、南アフリカでかつて行われていたアパルトヘイトは分りやすい絶対悪。ただ黒人というだけで人権を大幅に制限され、白人より下等な人間とみなされる。穏健な改革は望めない、それならばテロに訴えても白人優位の社会を変えていこうという黒人闘士の苛烈な戦いを描く。家族や友人を捨てても大儀に身を投じ、最後には自由を勝ち取った主人公。そして暴力による改革を成し遂げた末に、暴力を封じた彼の生き方は素晴らしい。しかし、物語のヤマに乏しく、もう少しスリリングな展開を用意しないと映画としては物足りない。
1980年、精油プラントで働くパトリックは爆破事件の濡れ衣を着せられ、拷問を受ける。その際、自分の妻までが拷問されたことから反政府組織ANCに志願する。テロリストとしてプラント爆破の任務を帯びて帰国したパトリックをニックという捜査官が待ち受ける。
パトリックのテロリストとしての意志の固さを描く一方、彼の妻・プレシャスの心の弱いこと。いくら浮気が原因でアリバイが証明できなかったとはいえ、妻への拷問を機に革命に目覚めたのに、結局妻の嫉妬でパトリックはニックの手に落ちるという皮肉。そのあたりで、人生のままならなさをもっと描き込んでほしかった。実在したパトリックの体験に基づいているのだろうが、ここをもっと深く掘り下げるべきだろう。
結局、人種隔離政策は崩壊、10年の服役の後パトリックは解放される。自由になったパトリックをプレシャスは出迎えるが、もはや彼女を愛する気持ちも憎む気持ちも消えうせている。それ以前に、革命に勝利したことへの喜びもパトリックには希薄だ。多くの血が流れ、自分自身も心身ともにずたずたにされた彼にとって、静かに暮らすことが唯一の望み。孤児院を運営し多くの子供たちを育てた彼の笑顔が平和の大切さを物語る。2010年のW杯南ア大会に向けては絶好のPRにはなっている。