こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

墨攻

otello2007-02-08

墨攻

ポイント ★★
DATE 07/2/3
THEATER 109グランベリーモール
監督 ジェイコブ・チャン
ナンバー 23
出演 アンディ・ラウ/アン・ソンギ/ワン・チーウェン/ファン・ビンビン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


裏切りと疑心暗鬼、そして保身。ひとりの英雄が生まれる裏側で、味方でありながら足を引っ張るという卑劣な手段で自らの生き残りを図る王と重臣。国家存亡の危機にあっても自分の利だけを考え優先させようとする所業はあまりにも人間くさい。一方の主人公は戦術には長けても政治には不向きで、味方の謀略にはまってしまう。映画は、戦闘を主題にしたスペクタルと人間模様を描き分けようとするが、結局どちらも中途半端で見所の乏しい映画になってしまった。


戦国時代の中国、趙の大軍に攻め込まれた梁の王は墨家の軍師・革離を招く。革離は早速城壁の守りを固め迎え撃つ。革離の戦術は趙軍の意表をつき包囲した趙軍を撃退するが、革離の人気を妬んだ梁王と重臣の陰謀で革離は梁城を追われる。


せっかく古代中国という神話に近い時代を舞台にしているのだから、もっと戦闘シーンにあっと驚くような仕掛けがあってもよかったはず。もはや時代考証の制約など受けない時代、もっと自由な発想の新兵器を楽しみたかった。地上から攻めあぐねた趙軍が気球に乗って上空から攻め入るシーン以外に目新しいアイデアに乏しく、白兵戦も平凡なカメラワークのせいで迫力はいまひとつ。戦乱の世で大活躍する男の話なのに、わくわくさせるような期待感が決定的に欠けている。


しかも革離がなぜか将軍の娘と恋に落ちるという蛇足つき。軍の指揮をしても礼は一切受け取らないはずが、その土地の女には心を奪われるなどというとってつけたようなバカバカしいアイデア。女性客を意識したエピソードであることがミエミエだが、必然性のない恋に共感を覚えるものはいないだろう。確かに中国映画得意の人海戦術でスケールの大きい作品にはなっている。だが、その大きさを支えるだけの骨格が物語りに備わっていなかった。


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