こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

バッテリー

otello2007-03-14

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ポイント ★★★*
DATE 07/3/10
THEATER 109シネマズグランベリーモール
監督 滝田洋二郎
ナンバー 47
出演 林遣都/山田健太/岸谷五朗/天海祐希
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


自己の才能を自覚し、誰にも理解されないと思い込み、打ち解けた態度を取れない。そんな、天才ゆえの孤独。中学にあがったばかりの少年に自分をうまく語る術はなく、ますます孤立を深めていき、数少ない理解者とまで衝突してしまう。どんな状況でもオレ流を貫き通し強引に周囲を屈服させるが、他人の気持ちにまで思いが至らない。能力は超一流でも、心は未熟まま。野球が好きでたまらないのに、その気持ちをチームメイトと共有できない主人公の、孤高という天才の宿命を繊細なタッチで描く。


剛速球投手・巧は中学に進学する直前に豪という捕手と出会う。豪は巧の球を受けたいと中学ではともに野球部に入る。しかし、誰にも心を開かず監督にも平気で口答えする巧とのあいだに溝が生まれ始める。巧の球は誰も打てず、いつしか巧のワンマンチームとなっていく。


いくら速い球を投げられても、それを受け止める捕手がいなければ野球は成り立たない。それを分かっているからこそ、巧は苛立ちを募らせる。自分はこんなに凄いのに、周りに受け止めるキャパシティがないために実力を出し切れない憤懣。いつも不機嫌な顔をし、自分自身を練習で追い込むことでしか満足を得られない寂しさ。周りから見れば鼻持ちならないヤツと思われる。そういった凡人では計り知れない選ばれた人間だけが体験するやり場のない怒りをうまく処理し、隠すという処世術を知らない少年の心理がとてもリアルに演じられている。


そして、巧の気持ちを理解しながらも捕球技術がついていかず、巧の足を引っ張る豪の苦悩。それでもなんとか巧みの力になってやりたいと笑顔を絶やさない豪のおおらかな気持ちが映画を暗さから救っている。ただ、巧や豪をはじめ中学生を演じている俳優のほとんどが高校生以上にしか見えないのが欠点。特にライバル中の4、5番打者などどう見ても大人顔というキャスティングはいただけなかった。


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