こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラストキング・オブ・スコットランド

otello2007-03-16

ラストキング・オブ・スコットランド THE LAST KING OF SCOTLAND


ポイント ★★★★
DATE 07/3/12
THEATER 有楽町スバル座
監督 ケヴィン・マクドナルド
ナンバー 48
出演 フォレスト・ウィテカー/ジェームズ・マカヴォイ/ケリー・ワシントン/ジリアン・アンダーソン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


強烈なカリスマ性と計り知れない狂気が同居したアミン大統領。驚かせたり脅かしたりする一方、その巨体を揺さぶりながら満面の笑みをたたえ、人の心を巧みにつかむ。しかし、自分探しにやってきた白人青年が目にしたウガンダの現実と独裁者の真実は、暴力と血にまみれた大地に立つ疑心暗鬼の塊のような男だった。フォレスト・ウィテカーがスクリーンからはみでるような迫力と左右大きさの違う目の繊細な動きで鬼気迫る演技を見せ、他のすべての出演者がかすんでしまうほどの圧倒的な存在感を示している。


英国の医学部を卒業したニコラスは医師としてウガンダに赴く。そこでクーデターで政権を取ったばかりのアミン大統領と知り合い、彼の主治医となる。ニコラスはアミンを暗殺から救ったことから政治顧問に抜擢、政権の中枢に入っていく。


地位だけでなくベンツまで与えられ思わぬ成功に有頂天になるニコラスが、アミンの想像を超えた猜疑心と残酷さを知り、次々と側近たちが消えていくなかでいつ自分が殺されるか分からないという不安を募らせる過程は、見ているほうも神経をすり減らす。外国人だから命だけは大丈夫と思っていてもパスポートが取り上げられ、変わりにウガンダ国籍のパスポートが用意されているシーンに、泥沼にはまり込んで抜けられなくなったニコラスの恐怖が凝縮される。やがてニコラスはアミンの傍観者ではなく共犯者に仕立てられる。


ニコラスはイギリスのみならずアフリカを植民地化したあらゆる先進国のシンボルとして描かれる。利用できるときは利用し、コントロールできなくなると見捨ててしまう。アミンに暗殺のプレッシャーをかけ猜疑心の塊のような暴君にしたのはまさに西側の政府なのだ。30万ににも及ぶ虐殺を指示した彼の暴虐ぶりは、実はヨーロッパが生んだものであることを、ニコラスの姿を通じて描いているところに、ケヴィン・マクドナルド監督の成熟した大人の分別を感じた。


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