こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ナイトミュージアム

otello2007-03-19

ナイトミュージアム NIGHT AT THE MUSEUM


ポイント ★★★*
DATE 07/3/17
THEATER TOHOシネマズ横浜
監督 ショーン・レビ
ナンバー 52
出演 ベン・スティラー/ロビン・ウィリアムス/カーラ・グギノ/ディック・バン・ダイク
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


まるで今にも動き出しそうなほどの躍動感をもつ展示物は、もしかしたら本当は生きていてるのではと思わせる。そんな、ありえないと分かっていても誰もが心の隅に抱いている疑惑をみごとに再現する。恐竜の骨格標本やアフリカの野生動物が走り回り、時代の違う歴史上の人物が語り合うという、普通の人間には見えない世界。命を得た展示物が朝までの短い間だけ本来の姿に戻るというファンタジーあふれる夜の博物館はディテールにまで描写が徹底され、主人公=観客をスリリングで楽しい世界にいざなってくれる。


息子のために博物館の夜警の職についたラリーは、夜になると展示物が勝手に動き出す姿を見る。混乱のあまり収拾がつかなくなり、仕事を投げ出そうとするラリーだが、セオドア・ルーズベルトの蝋人形に励まされ、この事態を収めようとする。


どんな仕事も長続きしない男が、息子の信頼を得るために夜の博物館をきちんと管理するという難題。自分のためだけなら、きっと投げ出していただろう。今までの人生で困難なことには背を向け自分の言い分ばかり主張してきたラリーが、初めて他者の気持ちを理解して説得して納得させて動いてもらうという経験を通じ、人間的にも成長していく。アッティラのトラウマを取り除き、オクタヴィウスの好戦性を生かし、ルーズベルトの恋に助言するなどという行為は、それまでのラリーには決してなかったこと。生きている時代も言葉も文化も違う人々だけでなく、動物たちも本気になって自分の言葉で話せば必ず思いは通じるのだ。


そして、展示物に命を与えるファラオの黄金が奪われたことからラリーは立ち上がり、手に汗握るアクションが用意されている。昼間は動きを止めていなければならない展示物がこのときとばかりに暴れまわる。自由になれる夜があるからこそ人間に見られるだけの退屈な昼間の時間に耐えられる、そんな彼らの心の叫びが聞こえるようだった。ただ「ジュラシック・パーク」を意識しすぎるのはどういうことなのだろう。。。


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