こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ハッピーフィート

otello2007-03-26

ハッピーフィート HAPPY FEET


ポイント ★★★*
DATE 07/3/24
THEATER 109シネマズ港北
監督 ジョージ・ミラー
ナンバー 58
出演 ////
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


細密に表現された、南極の氷の大地とめまぐるしく表情を変える大空、そして恵みを与えてくれる一方で未知の危険がいっぱいの海。そこで生きるペンギンやアザラシといった動物の表情や動きだけでなく、背景となる大自然の描写はフィルムの精度をしのいでいる。革命的ともいえる映像表現の技術は現代の最高水準、その美しさときめ細かさは、いずれ映画において俳優もセットも不要になるのではないかと思わせるほどで、もはや知覚できるリアルという域を超越している。今後の映画のあり方を変えるかもしれない画期的な作品だ。


歌のうまい両親から生まれた皇帝ペンギンのマンブルは、信じられないほどの音痴だが、巧みにタップを踏み見事なダンスを披露する。しかし、餌となる魚が少なくなった皇帝ペンギンの世界ではダンスはご法度となり、マンブルは群れを追放される。マンブルは魚が減った原因を探るべく遠い人間の住む土地を目指す。


CGアニメであることをすっかり忘れてしまうほどの写実的でスピード感満点の動きと重低音から高音まで再現した臨場感あふれるサウンドのおかげで、ペンギンの歌やダンスにも違和感をまったく感じない。むしろその圧倒的な歌唱力息を飲む。クライマックスで大地を埋め尽くすペンギンがいっせいに歌い踊るシーンには、本物のエキストラを使ったことが売り物の映画よりも迫力があるほどだ。すべてのシーンにおいて過剰とも思えるほどの情報量が詰め込んだクリエーターの熱意には頭が下がる。


個性が強すぎて仲間に理解されないマンブルという若者の自分探しの旅に、環境問題を絡めるという欲張った構成。巨大な漁船を前に無力感を感じながらも泳ぐことをやめないマンブルは、いまや自然にとって最大の脅威は人間であることをわかりやすく訴える。それでも、人間を自然の破壊者と描く一方で良心に訴えれば気持ちは通じるという善意の部分も残している。自分の心の叫びに忠実であろうとするマンブルが、最後に自然と人間を融和させるというでき過ぎたエンディングも心地よかった。


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