こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

鉄人28号 白昼の残月

otello2007-04-04

鉄人28号 白昼の残月


ポイント ★★
DATE 07/1/24
THEATER メディアボックス
監督 今川泰宏
ナンバー 15
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


無骨な鉄人の容姿、主要なキャラクター、そして廃墟から立ち直ろうとする東京の街並みなど、その昔テレビで見た「鉄人28号」ワールドを現代の表現技術で見事によみがえらせる。しかし、そのストーリーは分厚いホコリが積もったようで、登場人物のリアクションも恐ろしく時代がかっている。この作品が40年前に作られたというのなら当時のアニメ水準を知るうえで貴重だが、何ゆえまったく同じテイストで作ったのだろうか。鹿爪らしいナレーションで「大人向け」を装ってはいるが、21世紀の新しい鉄人像は見えてこない。


太平洋戦争中、秘密兵器として開発された廃墟弾の不発弾が東京の市街地で見つかる。正太郎は鉄人を操って廃墟弾を無力化するが、それをきっかけに次々と廃墟弾が発掘され、廃墟弾を狙う米国資本が東京に乗り込む。一方、正太郎の異母兄・ショウタロウや謎の復員兵も現れ、廃墟弾争奪戦に正太郎も巻き込まれる。


懐かしいというより古臭いのは、そこに新しさがまったくないからだ。たとえば廃墟と繁栄が背中合わせで同居する1955年の東京という背景にもっとリアリティを与えるとか、CGを使って奥行きを持たせるとか。原作に縛られるとはいえ、原作がテレビアニメ化された当時にはないような立体的な描き方ができるはず。また、鉄人と戦う巨大ロボットたちなら創作を加えても許されるだろう。いかにもブリキのおもちゃという感じの鉄人がハイテク武装したロボットを倒すというようなオリジナルな構図を見てみたかった。


まだまだ傷痍軍人や不発弾など戦争の傷跡が生なましい時代を舞台にしながら、反戦のメッセージも希薄だ。特攻隊員の生き残り・ショウタロウが戦争中に受けた心の傷などの生に対する虚無感などもっと深く掘り下げれば、奥行きのある物語になっただろう。廃墟弾を満載した大鉄人を見つめる、顔が半分溶けた鉄人の隻眼のまなざしだけが、悲しげで哀愁を誘う。


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