こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブラッド・ダイヤモンド

otello2007-04-06

ブラッド・ダイヤモンド BLOOD DIAMOND


ポイント ★★★★*
DATE 07/3/22
THEATER ワーナー
監督 エドワード・ズウィック
ナンバー 56
出演 レオナルド・ディカプリオ/ジャイモン・フンスー/ジェニファー・コネリー/アーノルド・ボスロー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


内戦で政情を不安定にすることで、白人が利権を食いものにするアフリカの現実。銃を持たない者は無残に殺され家族を引き裂かれる。そしてさらわれた少年たちは強制的にゲリラ兵に仕立て上げられる。すべてがダイヤモンドという商品が引き起こす悲劇。人間の欲の前にはあくまで命は軽く、強い意志を持つものだけが生き残ることができる。先進国の大量消費社会の欲望の行き着く先は貧困すらマシに見える、20世紀末の出来事とは思えない恐るべき無法地帯だ。黒人はダイヤで武器を買い、白人はダイヤを差し出せば敵味方関係なく武器を売る。映画はこの悪の連鎖に鋭いメスを入れ、本当に責任を感じるべきなのはダイヤを欲しがる消費者であることをあぶりだす。


シエラ・レオネの反政府ゲリラに拉致された漁師のソロモンは、大粒のダイヤを見つけひそかに隠す。さらに政府軍の反撃で捕虜になるが、ダイヤのことを知った白人の仲買人・ダニーに救われる。やがて内戦が激化、ソロモンはダニーと共にダイヤの隠し場所に戻ろうとする。


武装したゲリラが突然平和な村を襲撃したり、市街地で住民を巻き込んで交戦したりと、犠牲になるのは常に一般市民だ。いきなりの銃撃になすすべもなく倒れ、兵士たちも非武装の女子供を殺すことを躊躇しない。もはや文明とは程遠い野蛮人のような連中がこの国を支配する。悲劇をいう言葉すら生ぬるい殺戮の荒野を、家族のためにダイヤを取り戻そうとするソロモンの姿が涙を誘う。


ダニーは米国人ジャーナリストに情報と引き換えに安全を手に入れるが、このダイヤ市場の先兵で自分の利益にだけ忠実な男が、最期に善意に目覚めるところがわずかな救いだ。地獄のような世界で生き抜いてきた男にも人間の心が残っている。銃撃を受け死期を悟ったダニーが、ソロモン親子を救おうと自らを犠牲にし、悪の根源たるダイヤ販売会社を告発することで、少しは世界が動く。少なくともダイヤで身を飾ろうという気持ちはまともな神経の持ち主ならばなくなるはずだ。


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