ポイント ★★★
DATE 07/2/15
THEATER 映画美学校
監督 犬童一心
ナンバー 31
出演 二宮和也/相葉雅紀/大野智/櫻井翔
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています
芸術家としての成功を夢見ながらも、夢は夢でしかないことを薄々気づいている。そんな現実が目に入らないように仲間とのバカ騒ぎに時間を費やす。カネはなくとも時間と仲間だけには恵まれているという、いつの時代にもある若者たちの祭りのような日々とその終焉。犬童監督は、若さと友情だけが財産だった時代を懐かしむようでも美化するようでもなく、ひたすらリアルに感情と背景を再現する。それはがむしゃらに夢を追うのではなく、自分自身を見つめる時間としての青春。自分の可能性よりも自分の無力を思い知る旅なのだ。
漫画家の栄介、歌手の章一、画家の圭、小説家の竜三の4人はプロを目指して修行中。栄介の狭いアパートに転がり込んでひと夏だけ自由な創作活動に打ち込む。しかし、それは自分たちにはプロとしての才能がないということを確認しただけだった。
生活のためにやむを得ず労働に従事するか、自分の表現したいものだけで生きていくか。いくら理想を叫んでも背に腹は代えられない。そのあたりの挫折感が章一や竜三にはあまりなくむしろ貧乏を楽しんでいる。圭は絵が売れたりパトロンが見つかったりと一時は浮かれるが、それも儚く終わる。唯一、栄介だけが堅実に自分の道を歩んでいる。才能のないものは地道な努力の積み重ねが必要であることを、栄介は自分の背中で訴える。派手なことのない地道な日常でも、好きなことを続けていられる環境を得られることこそが人生を充実させる術なのだ。
4人それぞれ恋にも破れ、栄介以外の3人はきちんとした仕事に就くが、それでも冴えない感じは抜けきらない。注目されるわけでも金持ちになるわけでもない。おそらく成功とは無縁の人生を送るほとんどの人々の実像がそこにある。だが、これは現在の若者のリアルを描いたものではないのだ。舞台を40年以上も前に設定しているのなら、もう少し観客を楽しませる工夫があってもよかったのではないだろうか。。。