こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラブソングができるまで

otello2007-04-27

ラブソングができるまで MUSIC AND LYRICS


ポイント ★★★
DATE 07/4/21
THEATER 109グランベリーモール
監督 マーク・ローレンス
ナンバー 80
出演 ヒュー・グラント/ドリュー・バリモア/ブラッド・ギャレット/クリステン・ジョンストン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人生に疲れ気味の中年男と恋に破れて夢をあきらめていたもう若くない女が出会い、同じ目標に向かって共に努力するうちに恋に落ち、トラブルを乗り越えた後に恋も成功も手にするという、現代風ラブコメの王道を行くような展開。そこに、歌そのものよりもダンスを重視するポップス界の現実を風刺し、歌を創作する苦悩と喜びを織り込む。何より言葉そのものを大切にし、登場人物が口にする言葉の一つ一つが生き生きと命を持つ。それは「歌にとってメロディは外見、歌詞こそその本質」という台詞に象徴されるように、「言葉こそこの映画の本質」と宣言しているようだ。


かつてのアイドルスター・アレックスは今ではしがないドサ回りの日々。ある日、新進歌手の新曲を依頼され、偶然知り合ったソフィーに歌詞を書かせる。ソフィーは大学の同人誌に詩を投稿したことがあり、そのセンスにアレックスは惹かれていく。


音節を調え、韻を踏みながら、心の中にある迷いや希望、愛や悲しみをわかりやすいメタファーでつづるソフィー。それに耳ざわりよく覚えやすいメロディをつけていくアレックス。わずか数分の短い歌の詞と旋律に2人の人生が凝縮される。それは自分自身を再発見し、お互いの本質を知り、理解する作業でもある。自分のすべてをさらけ出し、相手のすべてを受け入れる。そんな2人が恋に落ちるのは時間の問題なのに、一度寝ただけでなかなか進展しない。このあたり、セックスが恋人になるためのゴールではなくなっていて、それ以上の精神的な強い結びつきを求めるという現代人のよりどころのなさがリアルに描かれている。


また、彼らが歌を提供するコーラという歌手の仏教風セクシーダンスがユニーク。観音のようなたおやかで優雅な動きとスピーディなブレイクダンスを見事に融合させ、インド風にアレンジした曲に乗って体をくねらせる。古典的なラブストーリーに、見事な現代風の味付けだった。


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