こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

The 焼肉ムービー プルコギ

otello2007-05-11

The 焼肉ムービー プルコギ


ポイント ★★
DATE 07/5/5
THEATER 109KW
監督 グ・スーヨン
ナンバー 88
出演 松田龍平/山田優/ARATA/田村高広
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


網に乗せた瞬間にジュッと縮こまり、油をたらしながら白い煙を出す。裏返し、全体的に焦げ目がついたら口に運ぶ。素材を焼くだけというシンプルな調理法ゆえに、本来捨てるような内臓でさえ仕込み次第では絶品の味わいを見せる焼肉。映像と音、そして食べている人々の幸せな表情だけで焼肉の味わいを表現する。そんな前半は、まるでスクリーンから煙が漂ってきそうなシーンの連続に、思わずよだれが出てくる。だが、その単純さゆえ驚きは長続きせず、無理やり挿入したようなコミカルなシーンがさらに足を引っ張っている。


赤肉の焼肉店・虎王の総帥トラオはチェーン店を全国展開するが、小倉だけはホルモン焼肉店・プルコギ食堂に完敗。トラオは料理対決番組でプルコギ食堂で修行中のタツジに真剣勝負を申し込む。


あくまでカルビやロースといった高級部位にこだわるトラオに対し、内臓肉にこだわるプルコギ食堂のじいちゃんとタツジ。赤肉はより豪華に、白肉はそのおいしさを引き出すための工夫を見せようというのがこの作品の狙いだ。特に、丁寧に塩をもみこんだハラミやコプチャンの網の上で焼ける音を聞き分け、その食べごろのタイミングを決して逃さない、田村高広扮するじいちゃんの人生を知り尽くした表情と「人と仲良くなるにはまず一緒に飯を食え」という言葉は、古い焼き肉店の壁や天井に染み付いた油のしみのような味わいがある。


しかしクライマックスの料理番組での対決は、タツジにあまりやる気がなく盛り上がらない。しかも、タツジとトラオが実は18年前韓国で生き別れた兄弟と判明すると、今度は突然トラオが勝負を投げる。その上タツジを弟とは認めない。このあたりの展開は見るものの予想を見事に裏切るのだが、それが新鮮な驚きにまで昇華することなく中途半端なまま。まあ、焼肉は気取った店で上品に食べるのではなく、小汚い店で煙まみれになりながらほおばるほうが絶対にうまいという、この映画の主張はよく伝わってきたが。。。


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