こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ドリーム・クルーズ

otello2007-05-14

ドリーム・クルーズ


ポイント ★★
DATE 07/3/26
THEATER 角川
監督 鶴田法男
ナンバー 59
出演 木村佳乃/ダニエル・ギリス/石橋凌/蜷川みほ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


過去の悲劇に憑り付かれたような悪夢から目覚めるとさらに恐ろしい出来事に襲われるが、それも悪夢だったという入れ子の夢という導入部。おぞましい姿をした女の悪霊が腹ばいになって追いかけてくる中盤。そして俳優のクローズアップとおどろおどろしい効果音の多用。すでに使い古されたようなテクニックのオンパレードにはなんら恐怖を喚起するものはない上に、舞台となる海に潜む怨念にも深みがない。一応、この映画の監督、表現テクニックはきちんとしたものを持っているが、作品としてのオリジナリティをまったく感じなかった。


ジャックは顧客の斉藤に誘われ、斉藤の妻・百合と3人で太平洋クルーズにでる。実はジャックと百合は不倫の仲で、斉藤はそのことを見抜いている。そんな時、スクリューに海草が絡まり、斉藤が取り除こうとしたとき突然スクリューが回り始める。


少年時代、ジャックは弟を海難事故で失い、それを心の傷として抱え、いつも弟の声が聞こえるうえ幻覚にも悩まされている。一方の斉藤は百合と結婚するために前妻を殺したという秘密を持つ。3人とも過去の行いから誰かに怨まれている。最初に斉藤が死に、斉藤がジャックを、前妻の亡霊が百合を殺そうとするのだが、その恨みの連鎖が非常にいい加減。百合を寝取られた斉藤はジャックを襲い、斉藤に殺された前妻が百合を殺そうとする。前妻に呪い殺された斉藤が屍鬼となってジャックを襲うのは、それだけ彼が憎かったからだろうが、自分も妻に同じ思いをさせていたはずだろとツッコミたくなる。


結局、海に引きずり込まれそうになるところをジャックの弟の幽霊に救われ、ジャックと百合はめでたく結ばれる。ラストで、ジャックがトラウマを乗り越えるのは分かるが、斉藤の死を願って彼がスクリューに巻き込まれたときに助けようとしなかった百合がこんなにのんきに幸せをむさぼっていいものだろうか。あまりのご都合主義に鼻白む。


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