こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

スモーキン・エース

otello2007-05-16

スモーキン・エース SMOKIN' ACES


ポイント ★★★
DATE 07/5/12
THEATER TOHOYK
監督 ジョー・カーナハン
ナンバー 94
出演 ベン・アフレック/アンディ・ガルシア/アリシア・キーズ/レイ・リオッタ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


スタイリッシュにして乱暴な映像からは繊細かつエネルギッシュなパワーがほとばしり、見るものを圧倒する。正面から派手に暴れるか、そっと忍び寄るか、変装して奇襲するか、遠くから狙い撃つか。単独で行動する者、複数で役割を分担する者さまざまだが、カネで雇われる殺し屋たちの彼らなりの流儀が見どころ。ホテルのエレベーターホールという狭い空間で惜しげもなくぶっ放される銃弾が、映画を死の美学にまで昇華させている。


マフィアのボスが裏切り者・イズラエルの命に100万ドルの賞金をかける。イズラエルが潜伏中のホテルに続々と一流の殺し屋が集まり、彼を守ろうとするFBIやボディーガードとの間で激しい銃撃戦が始まる。


あえて多くの登場人物に名前と役割を与え、物語を混乱させることで、死体と血のにおいが入り混じったカオスを演出する構成は一見わかりづらいが、それぞれの殺し屋たちが名刺代わりに殺していく手口がバラエティに富んでいるので整理やすい。特に拷問の名手といわれる男は細い金属性パイプを相手の肺に突き刺すことで命を奪うのだが、相手にあまり苦痛を与えない上出血量も少ないという非常にスマートな方法。無鉄砲に暴れまわるだけの3兄弟と比べ、殺し方にこだわりがあってプロ意識を感じさせる。イカレた殺し屋より、冷静に計算できる殺し屋のほうがやはりリアリティがある。


結局、殺し屋、FBI、イズラエルのボディガードらが入り乱れる戦場のような銃撃戦の上、無数の死体を残した後に事件の真相が明かされる。相棒を失ったFBI捜査官が真相を知る上官を脅して白状させるのだが、もはや誰もこんな謎解きには興味を持たないだろう。もともとミステリー仕立てなら、事件の発端となった60年前の潜入捜査にも興味を持つだろうが、派手なドンパチだけで最後まで突っ走ろうという映画に細かい理屈は無用。見終わった後、シューティングゲームを終えたような心地よい疲労感が残った。


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