こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リーピング

otello2007-05-24

リーピング THE REAPING


ポイント ★★
DATE 07/5/21
THEATER 池袋東急
監督 スティーブン・ホプキンス
ナンバー 101
出演 ヒラリー・スワンク/デビッド・モリッシー/アイドリス・エルバ/アナソフィア・ロブ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


神の奇跡、悪魔の所業といった超常現象を科学で解明しようとする研究者が、初めて目にする人智を超えた災厄。このヒロインはオカルトを否定しているのに、映画自体は肯定しているというちぐはぐなスタンスのために、、物語は混沌を極める。旧約聖書に記されている神の力をそのまま描いているようでは、いくら災厄を緻密に描いても、そこからは視覚的な驚きはあっても理性を納得させることはできない。これでは科学がオカルトに敗北したことを認めているのも同然ではないか。


オカルトを否定する研究者・キャサリンは、米国の田舎で起きた不思議な事件の解明を依頼される。そこでは川が血に染まりカエルが降ってくるなど、旧約聖書の十の災厄が起きている。村の住民はローレンという少女がその原因であるとして、彼女を迫害していた。


川の水、魚やカエルの死骸などを分析し、何とか説得力のある説明を組み立てようとするキャサリンをあざ笑うかのように、聖書の記述どおりに災厄は訪れる。そしてローレンを追いかけるうちに、いつしかキャサリンはオカルトを信じざるを得ない状況に陥る。しかし、それを彼女が理性で解決して逆転してこそ映画の醍醐味なのではないだろうか。


結局、「十の災厄」は村全体の悪魔信仰に対する神の鉄槌で、ローレンこそ神の使いだったというオチ。もはやキャサリンは科学者でもミステリーの解明者でもなく、ただ神の奇跡の目撃者となり、オカルトの存在を肯定してしまうのだ。まだまだ米国のキリスト教信仰の篤い地域では聖書の記述を信じている人々が多いらしいが、この映画はそういった原理主義者を喜ばせるだけ。もっと、神や悪魔の名を借りた人間のおぞましい所業だったというくらいのどんでんがえしが欲しかった。


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