こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド

otello2007-05-25

パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド
PIRATES OF THE CARIBBIEAN:AT WORLD'S END


ポイント ★★*
DATE 07/5/24
THEATER TOHOYK
監督 ゴア・バービンスキー
ナンバー 102
出演 ジョニー・デップ/オーランド・ブルーム/キーラ・ナイトレイ/ジェフリー・ラッシュ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


裏切りとどんでん返しの繰り返しで、誰が信用できて誰を疑うべきなのか混乱する。もちろんジャックが主人公なのだろうが、彼自身から「何かを成し遂げよう」という強烈な意識が伝わってこないために、降りかかってくる火の粉を払っているだけにしか見えない。嵐の中の渦巻きに飲み込まれそうになりながらのアクションも壮大で目を見張るのだが、あちこちに見せ場を拡散させすぎて非常に疲れる。また、ストーリー自体も屋上屋を重ねるように、登場人物のエピソードを加えていくために収拾がつかない。結果として、退屈はしないのだが印象の薄い作品になってしまった。


ウィルとエリザベスは、バルボッサとシンガポールの海賊サオ・フェンの助力で冥界でさまようジャックを救いだす。そして幽霊船のジョーンズを配下にした東インド会社の艦隊と闘うために、海賊長会議を招集する。


ジャックを中心に、はっきりと敵なのはジョーンズとベケットだけで、バルボッサ、ウィル、エリザベス、サオ・フェンなど、敵味方の区別があいまい。それが物語の展開を予想させないのだが、あまりにも登場人物を増やしすぎたためにキャラクターの交通整理をしなければならないのに、映画はそんなことはお構いなしに、次々と大掛かりなビジュアルとサウンドで思考を奪っていく。考える暇を与えないのなら、もっと物語自体の贅肉を落とすべきだろう。おまけに、ジョーンズとティアの過去の因縁やエリザベスとノリントンなどの関係まで描こうとする。


確かに3時間近い上映時間を感じさせない力技には感服するが、そこにはもはや自由を愛するジャックのおおらかさや呪われたジョーンズの苦悩はなく、ただただ刺激とスピードばかりを追い求めるジェットコースターのよう。時々ジャックが見る複数の自分自身の幻影にも、彼自身の孤独が投影されているわけではなく、最後までお子様向けアトラクションの域を出ていない。


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