こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ザ・シューター 極大射程

otello2007-06-01

ザ・シューター 極大射程 SHOOTER


ポイント ★★★
DATE 07/4/4
THEATER スペース汐留
監督 アントワーン・フークワ
ナンバー 65
出演 マーク・ウォールバーグ/マイケル・ペーニャ/ダニー・グローバー/ケイト・マーラ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


距離を測り、風を読み、ターゲットの動きを予測する。息を潜めて周囲の自然と同化し、数百メートル離れた場所から正確に相手の頭を撃ち抜くためにあらゆる情報をインプットして、経験に照らし合わせてトリガーを引く。プロローグ、狙撃手が敵の小隊を殲滅する場面のディテールは息を飲むほどの緊迫感。体術にも銃器の扱いにも優れた人間兵器である一方、質・量共に圧倒的に優位に立つ敵を倒すために明晰な頭脳を駆使する。そんな主人公を演じるマーク・ウォルバーグの身のこなしは、速さと力強さと洗練されたリアリティを兼ね備えている。


CIAの裏切りで相棒を失い、世捨て人のような暮らしをしているスワガーのもとに、大統領暗殺計画を知ったというジョンソン大佐が訪ねてくる。優秀な狙撃主ならどこから狙うのか、大佐はスワガーに問い、スワガーはアドバイスを与えるが、それはスワガーに暗殺者の濡れ衣を着せるための罠だった。


ジェイソン・ボーンのように素早く、ランボーのように力強い。街中で、山中で、スワガーは鍛え上げられた殺人マシーンとしての本領を発揮していく。ここでも、市販品で傷を治療し、点滴を射ち、爆弾まで作るというサバイバルの手腕。ただ、追っ手が警官やFBIのうちはスワガーの殺し方もスマートだが、重武装した軍人に変わったころから、ひたすら爆破と銃撃に頼る安易な展開。プロの軍人相手に圧倒的な訓練度の差を見せ付けるくらいのアイデアあふれるシーンを用意して欲しかった。


巧みに偽装し、新人FBI捜査官を仲間に引き入れ、陰謀の決定的な証拠を手に入れたスワガーは最後の勝負に出る。雪山での決闘。しかしここでも斬新な驚きはない。一応、ラストにもう一ひねりが用意されているのだが、わざわざこんな面倒くさいことをしなくても、最初から法による復讐よりも銃弾による復讐を選んでもよかったのではないだろうか。


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