こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

それでも生きる子供たちへ

otello2007-06-14

それでも生きる子供たちへ ALL THE INVISIVLE CHILDREN


ポイント ★★★
DATE 07/6/13
THEATER シネマライズ
監督 カティア・ルンド/ジョーダン・スコット&リドリー・スコットスパイク・リー/エミール・クストリッツア/メディ・カレフ/ステファノ・ヴィネルッソ/ジョン・ウー
ナンバー 115
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


貧困、戦争、エイズ、犯罪、孤児・・・。世界中で子供たちが直面している「現在」の問題を、国籍の違う7人の監督が鋭くえぐり出す、リアルとファンタジーが入り混じった個性あふれる作風の競作。1本20分足らずという制約があるからこそ問題点が凝縮され、描かれる子供たちの感情が増幅される。悲惨な環境も子供たちにとっては逃れられない日常、そこで生きるしかない彼らのたくましさがまぶしい。また、一応どの作品にも未来への希望を残しているので、見た後の気分もいい。


第1話のアフリカの少年兵や第3話のエイズ胎内感染の少女のエピソードが秀逸。親を亡くし仕方なくゲリラになった少年兵が平気で人を殺し、仲間の死にも無感動になっている。そんな彼が襲うはずの村の教室で勉強していたころのことを思い出すシーンには悲しみが充満している。また親からエイズをうつされた少女も学校での差別や育児放棄にもめげずに、生きる目標を見出していく。おそらく2人とも未来には明るいことなどほとんどないに違いない。それでも、ほんの少し彼らの心に希望の灯が点ったラストシーンは人間の理性への信頼が感じられた。


しかし、ジプシー少年を描いた第2話、カメラマンの幻想を見せる第5話は少しシュールな表現主義に走りすぎて肩透かし。ブラジルのストリートチルドレンが懸命に働く第4話は力作だが新鮮味がない。イタリアの少年犯罪を描く第6話はそれほど深刻とは思えず、先進国経済格差といってもこの程度で非行に走るのは社会というより個々の家庭の問題だろう。


金持ちだが満たされない少女と孤児の花売りの少女の対比を描いた最終話だけは、薄幸の少女が見せるいたいけな笑顔にどうしてもほろりとさせられる。このエピソードがハード・アクションのジョン・ウーの演出なのだが、ここまで子供を神聖視しておとぎ話に仕立てるのは、この連作映画のルールからすると反則技ではないか。。。


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