こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ブリッジ

otello2007-06-21

ブリッジ


ポイント ★★
DATE 07/3/15
THEATER 映画美学校
監督 エリック・スティール
ナンバー 51
出演
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


人は自分の命を絶とうとする瞬間、何を考えるのだろう。欄干を乗り越え遥か眼下の海を見ながら躊躇するものもいれば、すばやく空中に身を躍らせるものもいる。飛んでしまえば数秒ですさまじい加速で水面に叩きつけられる。橋のたもとに据えられたカメラは、自殺志願者を見つけても決して助けようとはしない。ただ傍観者として彼らの最期の瞬間をフィルムに収める。そしてジャンプが成功して初めて彼らの人生を追い始める。


サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジは全米有数の観光地である一方、自殺の名所としても知られている。徒歩で橋を渡ろうとする観光客の中には、今日もまたさまざまな理由から自分の人生を終わらせようとするものが混じっている。


自殺者の遺族や友人が在りし日の姿を涙ながらに語る。子供のときから精神が不安定で自分に価値を見出せなかった女性、うつ病に悩まされ続けた男性、その他薬物依存や失業など、自殺者は必ず死ぬ前に何らかのシグナルを周囲に発している。それを受け止め、自殺を止められなかったという残されたものの痛み。愛するものの自死を淡々と受け入れるもの、信じられないもの、怒り出すもの、皆一様に大きな傷を負っている。それをカメラの前で吐き出すことは彼らにとっての贖罪。故人の思い出を雄弁に語ることで自殺者が残していった心のしこりを吐き出そうとする。その姿は痛ましくも重苦しいが言葉には真実の持つ重みがある。


ただ一人、自殺に失敗して生き残った青年の、「飛んでいるうちに死にたくないと思った」という言葉が、自殺志願者の心情を雄弁に物語る。死のうとしている人たちも本当は誰かが止めてくれることを期待している。ここで誰かに声をかけられたらやめようと思っている。そのやめるきっかけがなかった人だけが身を投げるのだ。ただこの映画、悲劇を見世物にしようとか自殺を食い止めようとかいう意図がないのはよいのだが、構成がやや単調で編集にもキレ味に乏しく、時折挿入される美しい橋の全景がなければ退屈を禁じえない。


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