こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

舞妓Haaaan!!!

otello2007-06-25

舞妓Haaaan!!!


ポイント ★★
DATE 07/6/17
THEATER 109GM
監督 水田伸生
ナンバー 118
出演 阿部サダヲ/柴咲コウ/堤真一/伊東四朗
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


一見さんお断り。誰もがその存在を知りながらも、その閉鎖的なしきたりに門前払いを食い、実際に足を踏み入れることがなかなかかなわない世界。一介のサラリーマンを案内役にどうすれば馴染み客の紹介を受け、お茶屋に出入りすることができるのかをどたばたコメディにして描く。しかし、所詮は舞妓遊びを楽しむだけの器量が原作者である脚本家になく、出入りを許された時点で物語りは急速にパワーを失う。阿部サダヲのハイテンションだけでは2時間の上映時間を持たせることは無理だった。


高校時代の体験から舞妓好きになった鬼塚は、ラーメン会社の京都支店勤務となり有頂天。早速、お茶屋に行くが追い返される。その茶屋の馴染み客の社長に認められようと新商品を開発、大ヒットさせ、晴れて花街デビューするが、プロ野球選手の内藤に馬鹿にされる。


数百年の伝統を誇る花街のしきたりは、サラリーマンには手の届かない高い壁。「舞妓と野球拳」が夢という鬼塚にとっては、旦那として舞妓の面倒を見るというような大きな望みはない。その志の低さで突っ走り、お茶屋の旧弊に挑戦していくのがこの映画をツボなのだが、鬼塚がお座敷の常連になった後のエピソードはもはや付け足しで、笑わせようとするテンションは目に見えて落ちる。内藤と勝負するために野球選手になるまではコメディとしてまだ許容範囲だったが、その後、彼を追って俳優、格闘技、ラーメン屋、政治家と転進していく様は時間稼ぎにしか過ぎず、徒労感すら覚える。また、鬼塚に捨てられた元恋人の富士子が舞妓修行してお座敷に上がったのに、鬼塚に対してなんの復讐もしないのはどういうことだろう。


市長になった内藤と鬼塚が入れあげた舞妓の隠された過去のエピソードもとってつけたような不自然さだし、最後には舞妓が踊りを見せるショーにまで乱入する始末。鬼塚と内藤に舞妓の格好までさせるが完全にスベっている。確かにアイデアは面白いが、最初の思いつきだけでロクに取材もせずに花街の内側を描こうというのはあまりにも安易な発想だ。


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