こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リサイクル 鬼域

otello2007-06-27

リサイクル 鬼域



ポイント ★★
DATE 07/5/16
THEATER UIP
監督 オキサイド・パン/ダニー・パン
ナンバー 97
出演 アンジェリカ・リー/ラウ・シウ・ミン//
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


主人公が捨てたもの、忘れ去ったもの、それらはずっと忘却の世界で生きている。女性作家が新たにホラー小説の執筆を始めると、いつしか彼女自身がその世界に迷い込み、主人公と同じ感覚を味わうという、ロールプレイングゲームのような構成は、普通のホラー映画とは一線を画している。しかし、その表現自体は相変わらずおどろおどろしい音楽と突然大音響で驚かすような効果音の連続で新鮮味はない。ただ、人は忘れられることで本当の死を迎えるという、死んだものの悲しみは非常によく描けている。


人気作家のディンインは新作のテーマに霊体験を据える。物語の構成やキャラクターを考えているうちに、メモに書いたことが彼女の周りで現実に起こり始める。そして気づいたときにはゾンビが徘徊する廃墟に迷い込んでいた。


一度紙に書かれ、文章に描かれたものはすべて命が宿り、たとえ書き損じても見捨てられたものが来る世界で生き続けるという、仮想世界。それはすべてディンインが執筆中の新作の世界なのだ。ただ、廃墟や首吊り死体の森、墓標の谷など安物のお化け屋敷のような造形。気持ち悪さはあっても、もう見飽きたという感が非常に強い。また、胎児の洞窟に迷い込むシーンがあるが、胎児なのにすでにゾンビで、しかも赤ちゃんゾンビになって生まれてくる。生まれる前から死んでいるのに生まれてくるという矛盾には笑えた。


結局、偶然出会った少女に救われてディンインは元の世界に戻る。しかもその少女はかつて自分が堕胎した娘の成長した姿。ここに来てやっと、忘れようとしていたディンインの悲しい過去が今も彼女を苦しめていることが明らかになる。産まなかった娘が訴える、命の大切さこそがこの作品のテーマ。しかし、結局思わせぶりなラストでせっかくのいい話にしようとしているのをぶち壊してしまったのが残念だ。。


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