こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

きみにしか聞こえない

otello2007-06-29

きみにしか聞こえない

ポイント ★*
DATE 07/6/20
THEATER WMKH
監督 荻島達也
ナンバー 120
出演 成海璃子/小出恵介/片瀬那奈/石川伸一郎
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


孤独、憂鬱、困惑、心配、不安、悲しみ、苛立ちといった負の感情を視線と眉毛の動きで表現し、喜び、安心、思い出し笑い、はにかみといった感情をさまざまな笑顔を使い分けることで演じる。ソフトフォーカスのかかった室内と、コントラストの鮮やかな室外の映像は、まるで、女優・成海璃子のプロモーションフィルムのようだ。しかし、そこで語られるストーリーは稚拙で安易な設定とリアリティがまったくない、夢見がちな中学生が考えたようなおとぎ話。いっそのこと音声をすべて消せば、成海のファンにはたまらない環境映像になっただろう。


内向的で友達のいない女子高生・リョウはある日公園でおもちゃの携帯電話を拾う。そこにかか
ってきた電話を受けると、相手はシンヤと名乗る。やがて2人は脳内電話の回線をつくり、考えるだけで会話ができるようになっていく。そこに、ハラダという女性からもコールがある。


一種のテレパシーによる通信なのだが、そのきっかけとなる小道具を携帯電話にすることで現代性を持たせたのだろうが、そもそも聴覚障害者で言葉をしゃべれないシンヤが電話を使おうとすること自体おかしいとどうして気づかないのだろう。そのわりにラジカセなどという古い道具を引っ張り出すチグハグさ。しかも、会ったことのない2人が待ち合わせするのに、なぜかシンヤは待ち合わせ時間のかなり前からリョウとの回線を切ってしまう。その上に駅前のロータリーで暴走車にはねられてしまうのだ。暴走族でもこんなところで昼間から猛スピードで運転はしないだろう。


あまりにもおろそかにされるディテールに突っ込みを入れるどころか、しらけた空気が漂うばかりだ。2人の間に設定された1時間の時差を利用して、一応リョウはシンヤを助けようとはするが、結果は同じ。リョウに脳内電話をかけるもうひとりの女性が10年後のリョウだったというオチだけは、仕掛けとしては合格点だった。


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