こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ラッキー・ユー

otello2007-07-04

ラッキー・ユー LUCKY YOU


ポイント ★★
DATE 07/6/24
THEATER WMKH
監督 カーティス・ハンソン
ナンバー 123
出演 エリック・バナ/ドリュー・バリモア/ロバート・デュバル/デブラ・メッシング
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


プロギャンブラーたちは観察眼を磨き他のプレーヤーのちょっとした表情や体の変化を見逃さない。賭場で生きる主人公は相手の手札を見抜き、ブラフをかけ、ブタの手でも掛け金を手に入れる。そのスタイルは理解できるのだが、そのためのあっと驚くようなテクニックが披露されることなく、映画を見たものが使えるような必勝法もない。かといって恋人との熱い関係や、反発していた父との和解がテーマでもない。ツーペアのような強くも弱くもないな手で勝ちに行こうとして、途中で降りるような中途半端な印象しか残らない。


ラスベガスの賭けポーカープロ・ハックは借金まみれのその日暮らし。ある日、歌手見習いのビリーと知り合い仲良くなるが、彼女のカネを勝手に使って負けてしまう。彼女との仲と父との勝負のため、新たなスポンサーを見つけたハックは世界大会に出場する。


ポーカーといっても昔ながらのスタイルではなく、ほとんどイカサマの余地がないようなシンプルなルールが現在の主流なのだろう。配られたカードは運、だからこそ掛け金をめぐる駆け引きはスリリング。しかし、あまりにもまっとうに勝負するうえ、ポーカーフェイスのハックは感情が読めないため、パソコン相手のゲームのよう。さらに、ギャンブルに勝つことに無感動なのか、ギャンブル中毒の人間が感じるような虚無や破滅志向も描けておらず、題材に対する掘り下げ方が浅い。


冒頭、質屋のばあさん相手にデジカメを高く売る方法を指南するシーンに脚本家のセンスをとても感じたのだが、それに続くようなアイデアが出てこなかったのが残念だ。ビリーという恋人もポーカーというゲームの説明以外にはほとんど役に立っておらず、また、父親のLCがハックの母のリングを見せながらプレーしていたのは、実はハックに対してプレッシャーをかけていたくらいのウラが欲しかった。この父が、息子をダシにしてまで優勝を狙うような汚い男だったら、映画ももっと引き締まったはずだ。


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