こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

石の微笑

otello2007-07-05

石の微笑 LA DEMOISELLE D'HONNEUR


ポイント ★★*
DATE 07/2/19
THEATER エスパス・イマージュ
監督 クロード・シャブロル
ナンバー 34
出演 ブノワ・マジメル/ローラ・スメット/オーロール・クレマン/ベルナール・ル・コク
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


恋に落ちた女が恐るべき過去を持ち、それが現在にまで継続していると知ったとき、男の心は千々に乱れる。彼女との愛を受け入れるのか、それとも理性と良心に従うのか。女の持つミステリアスな魅力と豊満な肉体に溺れ、いつしかそのそのまま身をゆだねてしまいたい誘惑に負けそうになる男の気弱さと、男を純粋に愛しているということ以外は何を考えているのかわからない女の不気味さ。そこには意識的な悪意ではなく、ゲームのような感覚で殺人を犯してしまう恐ろしさが潜む。


フィリップは妹の結婚式でセンタという謎めいた女と出会う。彼女はフィリップを「運命の人」と呼び、センタの家で結ばれる。やがてセンタはフィリップに2人の愛を証明するためにお互い誰かを殺すという約束を交わしてしまう。


センタがフィリップの気持ちをコントロールするための、あらゆる駆け引きがリアルだ。まだフィリップと知り合う前は巧みに視線を絡ませ、いきなり自分から名乗りを上げ、フィリップの家に押しかけてボリュームのある裸体を彼に見せつける。おそらく、ベッドの上でもフィリップをメロメロにする技を持っているのだろう。短期間に優柔不断なフィリップは完全にセンタ抜きでは生きていけなくなる。むしろセンタの仕掛けた罠にそれと知っていてはまり、彼女に支配されることに快感を覚えているようだ。


やがて、センタは本気で人を殺す女であることをフィリップは知る。そこでやっとフィリップは踏みとどまるのだが、それでも愛と良心の間で逡巡している。そんなバカな男の繊細な気持ちをブノワ・マジメルはしかめっ面で見事に表現する。ただ、センタの生い立ちは語られるものの彼女の心の箍がいかにしてはずれ暴走してしまったのかを詳らかにしなければ、この女の本当の恐ろしさが伝わってこない。冒頭の誘拐殺人事件はセンタの仕業ということならば、もう少しその関連性を示唆してほしかった。


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