こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

フリーダム・ライターズ

otello2007-07-23

フリーダム・ライターズ FREEDOM WRITERS


ポイント ★★★*
DATE 07/5/18
THEATER UIP
監督 リチャード・ラグラヴェネーズ
ナンバー 99
出演 ヒラリー・スワンク/パトリック・デンプシー/スコット・グレン/エイプリル・リー・ヘルナンデス
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


貧困が人種間の対立を募らせ、犯罪に走らせるような街で育ったティーンエージャーをいかにして教育するか。社会から見放され機会を与えられなかった彼らにも、生きる目標と誇りを与えればきっと立ち直ることができるという信念の元、新任女性教師が孤軍奮闘する。教室でも憎悪をあらわにする彼らが心を開き、自信と誇りを取り戻し、何より人生に前向きになるにはどうすればよいか。きっかけを与え、見守り、そっと助言する。一方で自分で行動し周囲を説得する。できすぎた話だが、ヒロインの理想にはつい共感してしまう。


人種間のグループが抗争を繰り広げるロングビーチにある高校に赴任したエリンは教育困難クラスを受け持つ。早速人種の壁を取り除き、「アンネの日記」やホロコーストの歴史を学ぶことで憎しみの無益さを教えていく。


エリンは自分たちの気持ちを暴力的にしか表現できなかった生徒たちに、日記を書かせる。そこでエリンは生徒たちの現状と本音を知る。決して学力がないのではなく、学ぶ機会がなかっただけ。彼らの好奇心を上手に刺激し、考える癖をつければ優秀な生徒たちであることを見抜くのだ。エリンに導かれ、自分の正の部分を見つけた生徒たちの表情が劇的に変わっていく。ホロコーストを学べばどんな悲惨な現実でも生ぬるいと思えるのだろう。アンネが死ぬことに女生徒が本気で怒るシーンに、生徒たちの無垢な心が反映されている。


反面、夫との仲にひびが入ったり、学校の協力が望めず活動資金を得るために夜や週末にバイトをする。そこまで一心に教育にかけるエリンの情熱は確実に生徒に伝わる。教師自身が本気で人生の困難に立ち向かっていることで、何でも人種感憎悪のせいにしている生徒たちに手本を示すのだ。だからといって熱血を表に出すわけではない。そのあたり、ヒラリー・スワンクが非常に知的で洗練された演技を見せ、毅然とした態度を決して失わないクールなヒロインを好演していた。


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