こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

リトル・チルドレン

otello2007-07-31

リトル・チルドレン LITTLE CHILDREN


ポイント ★★★
DATE 07/4/24
THEATER シネマート
監督 トッド・フィールド
ナンバー 82
出演 ケイト・ウィンスレット/パトリック・ウィルソン/ジェニファー・コネリー/ジャッキー・アール・ヘイリー
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


退屈でありふれた生活。郊外の住宅街では平和な日々が流れていく。しかし、問題がないはず暮らしこそが不満の原因となって、そこに住む人の心を不安に陥れる。どこかで選択を誤ったのではないか、もっと違った人生があったのではないか。まだ肉体的にも精神的にも若くて活動的なのに家庭に縛られてしまった30代前半の男女なら誰でもが抱くであろう葛藤をリアルに描く。静謐な映像と極力音楽などの効果音を廃し、徐々にテンションを高めていく手法は、日常に潜む鬱憤が沸点に達するまでを緊張感たっぷりに描く。


住宅街の公園で子供を遊ばせていた専業主婦のサラは、司法試験浪人中の子連れパパ・ブラッドと知り合う。平日の昼間、プールで子連れデートを続けていた2人は、雷雨の日に結ばれる。一方、元児童性犯罪者が舞い戻り、静かな街は騒然となる。


仕事が忙しくあまり家庭を顧みない配偶者がいかに昼間家に残された妻や夫の夢を奪っているか。こっそりとエロサイトで女性下着を買うサラの夫や、クレジットカードの利用明細に細かい注文をつけるブラッドの妻。一方で、たった一度だけのキスに胸をときめかせるサラとブラッド。自分たちに収入を得るだけの生活基盤がなく、経済的に依存する代償として自由を売り渡しているからこそ刺激が欲しくなる。男と女、結果的にカネがかからず一定のスリルと満足が得られるセックスに走るのは当然だろう。あまりにも通俗的だが現実としての説得力は強い。


初めての不倫旅行も無事終えた2人は、本格的に駆け落ちを試みる。しかし、事件に巻き込まれて失敗、2人はおそらくもとの日常に戻っていく。過去は変えられないが未来は変えられる、そんな言葉に象徴される心の中のわだかまりの反面、考える時間がたっぷりあるということは中途半端な人間とって、自分の人生が中途半端であることを確認するだけのプロセスに過ぎない。結局、中途半端な結果で終わったサラとブラッドこそ、普通の人間の代表なのだ。


↓メルマガ登録はこちらから↓