こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

消えた天使 

otello2007-08-15

消えた天使 THE FLOCK

ポイント ★★
DATE 07/8/11
THEATER TOHOYK
監督 アンドリュー・ラウ
ナンバー 158
出演 リチャード・ギア/クレア・デインズ/ケイティ・ストリックランド/ラッセル・サムズ
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


繰り返される性犯罪への怒りと性犯罪者を野放しにしていることへの苛立ち。それらがフラッシュバックや映像の歪み、過剰な効果音といった、まるでB級ホラー映画のような表現法で描かれる。しかし思わせぶりな演出とは裏腹に、登場人物の心の闇を解明することなく、誘拐事件の犯人探しというミステリーとしても中途半端。性的倒錯者による異常犯罪に立ち向かうには、彼らの思考パターンを読む意味である種の狂気が必要なのは理解できるが、取り締まる側が無法者と同じ土俵に立っていいものだろうか。


性犯罪前科者の監察官・バベッジは行き過ぎた監視のせいで退職を余儀なくされていた。後任のアリソンに引継ぎをしている途中、女子大生誘拐事件が発生、バベッジは性犯罪者の仕業とにらんで独自に捜査を始める。


自らの性癖を満足させるために女性や子供を餌食にするき犯罪者のおぞましい実態。そして更生したことを決して信じようとしないバベッジ。それどころかバベッジは一方的な暴力で彼らを排除しようとさえし、前科者よりバベッジのほうがよほど不快な人物だ。バベッジの私生活は一切語られないが、おそらく妻や娘が性犯罪の犠牲になり、深い傷を抱えて生きているのだろう。そのあたり少しでも示唆するようなシーンやセリフがあれば彼にも感情移入できるのだが、それがなければ退職を前にただ暴走しているだけ。これではアリソンでなくても嫌悪感を抱くだろう。


自らの知識と経験で警察より早く女子大生誘拐事件の犯人にたどり着くバベッジとアリソン。そしてバベッジの直感が正しかったことが証明される。犯人には服役による更生など微塵もなく、犯行を繰り返すという救いのなさが米国の性犯罪の実態なのか。結局、バベッジの行為は正当化され、彼のような人物こそ性犯罪予防に必要なことは理解できるのだが、現在のバベッジを作り上げた過去とは何だったのかをきちんと描く必要があったはずだ。


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