こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ウェイトレス

otello2007-11-21

ウェイトレス WAITRESS

ポイント ★★*
DATE 07/11/17
THEATER チネチッタ
監督 エイドリアン・シェリー
ナンバー 234
出演 ケリー・ラッセル/ネイサン・フィリオン/シェリル・ハインズ/ジェレミー・シスト
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


鮮やかな色彩のパイの数々はヒロインの夢、いつかきっと自分の人生をつかみ取ろうという決意だ。彼女は仕事場では口うるさい雇用主、家に帰れば独占欲の強い夫にいつも従順であることを求められる。女の地位が向上したと思っていても、まだまだ保守的な地域では専門的な教育を受けていないと男の言いなりになって生きていくしか道はないが、ちょっとしたきっかけさえあれば変わることができる。女の自立という古くさいテーマを扱いながらも、妊娠中のセックスという新たな要素が映画に彩を添える。


ダイナーのウエイトレス・ジェナは暴力的な夫・アールに愛想を尽かしていたが、妊娠していることが発覚する。検査に出向いた産婦人科で新人医師のポマターと出会い、ジェナの心に火がついてしまう。


職場と家の往復だけの単調な毎日。楽しみは同僚とのおしゃべりとパイ作りだけ。夫や店のマネージャーからは女として扱われず、寂しさだけが募っていく。ジェナはポマターに襲い掛かるように唇を奪う。その唐突さと激しさは、押さえつけてきた彼女の感情が爆発するよう。何より自分を人間として扱ってほしい、そんな妻の孤独と不満がポマターとの不倫に走らせる。疲れ気味の顔しか見せなかったジェナが急に張り付いたような笑顔を見せるシーンに、恋する女の充足感が凝縮されている。


しかし、彼女を受け入れてしまうポマターの気持ちがよく分からない。ジェナの願いがこもったパイを食べたから彼女に恋をしたのだろうが、それがポマターの心の瑕疵を癒す効果を見たかった。相手は妊娠中の人妻、しかもやつれた顔をした患者ではとても魅力的には映らないはず。さらに妊娠後期の女の体は男の性欲を刺激するものではないのに、それでもポマターを虜にした原因をきちんと描くべきだろう。結局、出産を期に夫に三行半を突きつけ、念願のパイコンテストにも優勝して、その腕を生かしたダイナーを持つ。ジェナは男に頼らない幸せを得るのだが、できすぎた結末にもう一ひねりほしかった。


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