こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ミッドナイト イーグル

otello2007-11-26

ミッドナイト イーグル


ポイント ★★
DATE 07/11/23
THEATER THYK
監督 成島出
ナンバー 238
出演 大沢たかお/竹内結子/玉木宏/吉田栄作
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


峻険な雪山、北の工作員、米軍ステルス機、自衛隊精鋭部隊、そして核弾頭。ハリウッド映画並みのスケールの山岳アクションと国家レベルの陰謀は日本映画の規格を大きくはみ出している。しかしそこで描かれる物語はリアリティに乏しく、アイデアも未熟。その不足を補うようにお涙頂戴的な湿っぽいシーンでお茶を濁す。何より主人公の造形が薄っぺらで、とても日本の危機を救うようには見えない。


カメラマンの西崎は冬山でステルス機の墜落を目撃、記者の落合と共に現場に向かう。ステルス機に搭載されていた特殊爆弾をめぐって北の工作員部隊と自衛隊特殊部隊が交戦、西崎も巻き込まれる。


西崎はかつてカメラを手に戦場を駆け巡っていたといっても所詮は民間人、落合も同様だ。ふたりは雪山で黒や赤の非常に目立つ防寒服を着用している。一方で工作員自衛隊は雪山迷彩で完全武装。なのに自衛隊を一瞬でほぼ殲滅した工作員がなぜか西崎たちを仕留められない。さらに西崎は銃器の扱いに慣れていないはずなのに、銃撃戦では工作員と互角に渡り合う。西崎が実は外人部隊にいたとかいう設定ならば納得もいくが、高度な訓練を受けている工作員より実戦に長けているはずはない。西崎と落合に有利な点があるとすれば、舞台になった山を我が家の庭のように知り尽くしていること。ならば銃ではなく、天候と地形を利用した偽装工作や罠で敵を倒していくというくらいのプロットは考えるべきだろう。


アクションシーンは雪山での銃撃戦だけという物足りなさ。東京での追いかけっこや総理官邸でのやり取りも、登場人物に切迫感が感じられない描き方。結局、西崎らの犠牲で解決を図ろうとするが、その際も作戦指揮室につながれたCCDカメラを西崎は独占、落合や自衛隊の生き残り・佐伯三佐に最期のメッセージを送らせてやる心遣いもない。義妹が言うように最後まで自分勝手、命を捨てるのも、生きるのに疲れた西崎の「かっこよく死にたい」という自己満足にしか見えなかった。


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