こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

椿三十郎

otello2007-12-05

椿三十郎


ポイント ★★*
DATE 07/12/2
THEATER WMKH
監督 森田芳光
ナンバー 246
出演 織田裕二/豊川悦司/松山ケンイチ/鈴木杏
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


完成度の高い古典的名作を同じ脚本でリメイクすることの難しさ。ストーリーもキャラクター設定も変更せず、モノクロをカラーにするだけだ。まったくそっくりに作り多少の物足りなさはあっても、面白いのはそれだけ元が優れていたということだ。しかし、主人公とライバルに扮する顔が小さい現代の俳優からは荒々しさや狂気が消え、ほとばしるような迫力に乏しい。何より織田裕二に「鞘に納まりきれないギラギラした刀」の感じがないのが残念だ。このあたり圧倒的な三船敏郎との「格」の差を感じずにはいられない。


藩上層部の汚職を知った9人の若侍が廃社で詮議をしていると、浪人が現れて彼らの結論にケチをつける。果たして事態は椿三十郎と名乗るその浪人の言うとおりになり、若侍たちは三十郎に助力を請う。


時にダイナミックに時に繊細に、そしてコミカルな味付けも忘れていない。また、敵方に捕まった4人の若侍を助けるシーンで数十人の侍を三十郎はたたき斬るのだが、最後のほうでは息が上がり疲れた様子を見せる。人智を超えた存在のはずの三十郎が弱みを見せるのだ。事態の行方の一歩先を常に見通し先手を打っていても、家老の奥方と娘にはすっかり手玉に取られ、どうも女が苦手なのもご愛嬌。このリメイクでは三十郎の人間くささを強調しているように思える。


クライマックスの室戸半兵衛との決闘には大胆な変更が加えられ、正対してにらみ合った後、お互い相手の刀の柄に手を掛けて刀を抜けないようにする。そのまま倒れたふたりは起き上がりざま同時に太刀を振るうのだ。黒澤版のように、三十郎の太刀筋がまったく見えず、抜いた瞬間室戸の胸から噴水のように血が噴出すといことはない。ここでも三十郎は腕も立ち頭も切れるがあくまでも人間というスタンス。彼を超人的なヒーローとして描かずリアリティを重視しているのは昨今のハリウッド映画の影響だろうか。。。


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