こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベオウルフ/呪われし勇者

otello2007-12-06

ベオウルフ/呪われし勇者


ポイント ★★
DATE 07/12/1
THEATER THYK
監督 ロバート・ゼメキス
ナンバー 245
出演 レイ・ウィンストン/アンソニー・ホプキンス/ジョン・マルコビッチ/ロビン・ライト・ベン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


変幻自在のカメラワークはめくるめく躍動感を与え、デフォルメされた矛や矢などのディテールが登場人物の心理を強調する。しかし、この作品はあくまで映画であってコンピューターゲームではない。せっかく人間が演じているのに、それをデジタルで再合成する意義がどこにあるのだろうか。有名俳優に似せただけの薄っぺらな絵のような不自然さが目立ち、物語の興味を殺いでしまっている。本来なら3Dで見てその立体感を楽しむべきなのだろう、ならばその設備のない映画館で上映するのは間違っているのではないだろうか。


6世紀初頭のデンマーク、フロースガール王が宴会を開いていると醜い巨人・グレンデルが乱入、家来たちを惨殺する。王はグレンデルを退治できる勇者を国中から募集すると、海の勇者・ベオウルフがやってくる。ベオウルフは素手でグレンデルを倒す。


北欧に伝わる神話を元に映像化したのは理解できるのだが、神話ならそこに何らかの教訓が込められているはず。グレンデルが実はフロースガールと沼に棲む魔物の間にできた子供で、ベオウルフもまた王になった後魔物との間にできた子供に王国を荒らされるという歴史を繰り返す。父と子の葛藤なのか、魔物は異民族の象徴なのか。魔物と交わることで力を得た男が自分の子に攻められ、結局自分で自分の子を殺す羽目になる。その戦いは壮絶なスペクタクルとして描写されるのだが、何を意味するのか最後まで不明だ。


ブッシュ米国大統領父子とイラクの関係を描きたかったのだろうか。ブッシュ父がフロースガール、グレンデルがフセイン、ベオウルフは現ブッシュ大統領、そして怪物を生み出す魔物が本当の黒幕。イラン革命の拡大を阻止するためにイラクを援助したのに湾岸戦争フセインに噛み付かれたブッシュ父、フセインを打倒して平和を取り戻したはずなのにいまだに泥沼から抜け出せない現大統領。テーマが見えてこないストーリーに現代的な解釈を加えるのならば、米国が今戦っている敵は、元は米国自身が自分で蒔いた種、ということだ。


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