こんな映画は見ちゃいけない!

映画ライター・福本ジローによる、ハリウッドの大作から日本映画の小品までスポットを当てる新作映画専門批評サイト。

ベティ・ペイジ

otello2007-12-18

ベティ・ペイジ THE NOTORIOUS BETTIE PAGE


ポイント ★★
DATE 07/11/5
THEATER 映画美学校
監督 メアリー・ハロン
ナンバー 224
出演 グレッチェン・モル/クリス・バウアー/ジャレッド・ハリス/サラ・ポールソン
批評 ネタばれ注意! 結末に触れています


扇情的なポーズと挑発的な目。彼女の姿態は全米の男を虜にし、共産主義より害悪とのレッテルを貼られる。まだ性表現の規制が厳しかった時代、雑誌でヌードを見せることが神から与えられた使命と信じ、一片の屈託もなくタブーに挑戦していったヒロイン。キリスト教の信仰とセックスシンボル、この一見相容れない要素を巧みに自分の中に取り込んで消化し、新たなトレンドを生み出した彼女の人生を浮き彫りにすることで世間の価値観とは何かを問う。しかし、彼女の表層的な行為をなぞってはいるものの心理的な描写が少なく、人物像に対する作りこみが甘い。


厳格な両親に育てられたベティは自らも熱心な信者。若くして結婚・離婚を経験した後、ニューヨークに出る。そこでカメラマンに声をかけられたことから本格的にモデルの道に進む。


おそらくポルノ規制が行われた1955年ころの時代の雰囲気をよく再現しているのだろう。編み上げブーツやハイヒールを身に着けても現代の感覚からすれば特にセクシーというほどでもなく、ボンデージといっても手足を縛るだけで亀甲縛りの洗練とは程遠い単純さ。しかも男優との絡みは一切なし。この程度のものがポルノのレッテルを貼られてしまうことに当時の不自由さを感じる。こういうところからひとつずつ、クリエーターやアーチストたちはセックスも含めて表現の自由を勝ち取ってきたことに感慨を覚える。


裸を売り物にしている割にはベティのセックスライフがまったく描かれていなかったことに違和感を感じた。彼女は非常に身持ちが固く、言い寄ってくる男たちに簡単には体を許さない。そのあたりはDV男との結婚生活や集団レイプされたことがトラウマになっているのかもしれないが、セックスをしないセックスシンボルという矛盾した位置づけが最後まで理解できなかった。


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